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iPhoneでEメールを開いた後にしばらくPC側でEメールが開けないときの対処 [もろもろ]

PC用のEメールをiPhoneからも開けるようにしているのだけど、
「iPhone側でEメールを開いた後、数分間はPC側のEメールがサーバに繋がらない」
という現象に以前から困っていました。

iPhoneのメーラーがメールサーバを占有して離さないんだろうな、
という想像はしていたものの、回避する設定方法があるのかどうかすらわからない。

で今さら気付いたのが
「メールアプリがバックグラウンドで完全にフリーズ状態に移行するとPC側のメーラーがサーバに繋がるようになる。としたら、メールアプリを強制終了すればいいんじゃね?」
という単純な仮説。

結論としてはこれがビンゴでした。
iPhoneでEメールを開いた直後にPC側でもメール受信したいようなときは、iPhoneのメールアプリを強制終了すれば解決。

これだけでわかる人には以下は蛇足です。
iPhoneアプリの強制終了のしかた。

・最近開いたアプリ一覧の画面を起動します。
 iphone.png
 iPhone8以前の機種は、ホームボタンをダブルクリック。
 最近のホームボタンのない機種は、ホーム画面の下部から上にスワイプし、画面中央付近で指を止めてそのまま少し待つと起動します。

・左右にスワイプしてメールアプリを見つけたら、メールアプリのカードを上にスワイプすると強制終了。

以上、覚え書きメモ。

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『この世界の片隅に』 単語帳 [もろもろ]

2016-11-09 .jpg

『この世界の片隅に』の原作を読む前に映画に行く人のための単語帳を作ってみました。
原作漫画に説明のある広島弁や、耳から聞くだけではわかりにくい言葉を中心にピックアップしています。
おおむね出てくる順。
なおネタバレはないのでご安心ください。

・はやる:風で飛ぶ。

・こくば:落ち葉。かまどの焚き付けに使われた。

・よいよ:全く。

・あんた家(がた):あなたの家。「〇〇さん家(がた)」という言い方も登場する。

・新な(にいな):新しい。

・安気に(あんきに):安心して。

・隣保(りんぽ):となり近所。作中では「鄰保館」という公民館のような施設のこと。

・モガ:「モダンガール」の略。

・千人針(せんにんばり):出征する兵士に武運長久を願って贈られた、千人の女性で1針ずつ赤い糸を刺した布。

・建物疎開(たてものそかい):防空・防火のため、住宅密集地や重要施設周辺の建物をあらかじめ間引いて空地にした。

・やねこい:難儀な。むずかしい。

・間諜(かんちょう)行為:スパイ行為。

・録事(ろくじ):軍法会議所の事務官。

・GKF:南西方面艦隊のこと。

・ホゲタ:穴のあいた。

・雪隠詰め(せっちんづめ):将棋用語で、逃げ場のない所へ追い詰めること。

・スフ:「ステープルファイバー」の略。粗悪な化学繊維。

・JOFK:のちの日本放送協会広島放送局。

・伝単:敵国の民間人や兵士の戦意喪失を目的として撒かれた宣伝ビラ。

・落とし紙:便所で使うちり紙。

追伸……この作品はエンドロールの最後までストーリーがあります。
    劇場の照明が点くまで、どうか席を立たずにしっかりとご覧ください。
    スクリーンの下に入るラフスケッチに注目してください。

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2017.1.5. 「建物疎開」を追加。「やねこい」の説明を修正。

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auのiPhoneで連絡先の復元ができないとき [もろもろ]

auでiPhoneを機種変更したときにさんざん苦労したことが、2回目のときもぜんぜん憶えてなくてまた苦労してしまった。
ということで自戒を込めてメモしておく。
あくまで私の使っていた環境で起こったことなので、他の人の役に立つかはわかりませんが。

iPhoneからiPhoneに機種変更したときは、iTunesの「バックアップの復元」でだいたい移行できる。便利。
あとはApple IDのログインやいくつかの初期設定だけかと思いきや、2つほど大きな問題に当たる。

1.キャリアメール(XXXX@ezweb.ne.jp)が使えない。
2.連絡先(アドレス帳)が復元されない。

以下、2回の苦労を踏まえた教訓。

【ワナ】
ちょっと調べれば、上記の1.の問題はほどなくネットで解決策が見つかる。
「auサポート」の「iPhone設定ガイド」に入っていき、「メールアプリ(Eメール)利用設定」または「メールアカウント再設定」を押してSNSに設定用のURLを送信するというやり方だ。
これで確かにezwebのEメールアカウントが生成され、Eメールが使えるようになる。

だがこれはワナだ。ワナなのだ。
(2回騙されたので2回書いておく)

実はこれだと2.の連絡先が復元できない問題の方が行き詰まり解決しないのだ。


【正解】
まず、まだ買い替え前とか、旧iPhoneのデータを削除していない場合は、あらかじめauのアプリ「データお預かり」でauのサーバに連絡先をアップしておくのが手っ取り早いと思う。

で、既に機種変更を済ませて旧端末もバックアップして本体データ削除して下取りに出しちゃった場合。
1.のキャリアメールの再設定はこちらから実施する。
 メールアカウント再設定(WiFiはオフにしておく。PCからここへのアクセスは無効)

ポイントは
『「メールアプリ(Eメール)」と「メールアプリ(◎Eメール)」は別物なのだよ』ということ。
作成したプロファイルが「Eメール」だとアドレス帳は復活しないが、
上記で作成した「◎Eメール」だとアドレス帳が復活する。

参考:auお客様サポート(現在リンク切れ)
【iPhone / iPad】連絡先(アドレス帳)が消えてしまい復元できません


……次に機種変更したときには、このエントリーの存在を忘れてまたやってしまうかもしれん。
それまでに、auサポートがこのトラップを解消してくれてればいいんだけど。

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(2016.06.28追記)
「◎Eメール」のプロファイル作成でアドレス帳は復活したものの、肝心のEメール送受信は「Eメール」のプロファイルを作らないとうまくできません。かといって「◎Eメール」を削除するとアドレス帳も消える。
結局「◎Eメール」「Eメール」両方のプロファイルを持つはめに。
よくわかりません…


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BALMUDAのトースターに乗り換え [もろもろ]

20150817.JPG

オーブントースターをバルミューダの「The Toaster」にして1ヶ月ほど経った。
この製品を知ったのは偶然で、前に使っていたトースターの調子が悪くなってきて、デザインのいいものを探す中でたまたま目に留まったのだ。
発売から日も浅いのにさまざまな記事で絶賛されていて、機能的にも突き抜けた面白いものだとわかったので、高かったけど思い切ってこれを選んでみた。

で1か月間使っての感想。
これはあれだ、高級炊飯器とほぼ同じカテゴリーの製品。
「パンが大好き」「毎日パンを食べてる」みたいな人には、値段に見合う価値は十分にある。
しかし、そこまでパンにこだわりがない人にまで、ぜひ買えと勧めるほどのものではない。


普通のトースターよりは、まあおいしく焼ける。
圧倒的かと言われると、「いや普通のトースターでも十分おいしいよ」くらいの差。
このトースターに換えることによる味の差よりも、おいしいパン屋さんのパンと工場で大量生産したパンの味の差の方がずっと大きい。

そういう意味で、高級炊飯器で炊いたご飯と普通の炊飯器で炊いたご飯、高級アンプで聴く音楽と普通のアンプで聴く音楽の違いみたいな話と同じようなものだと言える。
ご飯大好き、音楽大好きな人がそれらのちょっとした差に満足するように、パンが大好きな人はきっと満足すると思う。

あとは使い勝手の話をすると、パンの種類に合わせたモード選択と1秒ごとの温度測定&ヒーター制御のおかげで、ほぼ失敗なく焼けるのはありがたい。(チッチッと小さく鳴る音とカチカチ切り替わるリレーの音が聞こえるのが気になる人はいるかもしれない。私はあまり気にならなかったが)
また、従来のトースターのように300W/600W/1300Wの固定モードもあるので、パン以外の加熱調理も問題なし。

値段は普通のトースターと比べれば飛び抜けて高い部類だが、それでも高級炊飯器と比べればまだ低い価格帯なので、やはりそれなりにパン好きな方は考えてみてもいい製品だと思う。



....と、ここまでは冷静な評価。

このトースターには「チーズトースト」というモードがあるが、これだけは別格。
素晴らしい。最高。
これは普通のトースターでは決して再現できない焼き上がり。
チーズトーストが好きという人には全力でお勧めします。
201508018-2.jpg
もう病みつき...


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JAL安全啓発センターの感想 [もろもろ]

失敗学・危険学を学ぶ者として、一度行っておきたいと思っていた「JAL 安全啓発センター」を見学してきた。
神妙な気持ちになるだろうとは思っていたが、予想以上に神妙な気持ちになった。
これから行く人のためにあまり詳しくは書かないが、JALのサイトでも紹介されているように、1985年の123便墜落事故の現物展示を中心に「事故に学び安全運航の重要性を再確認する場」として設立された研修施設だ。
JALグループ社員だけでなく、一般の人もWeb予約すれば見学できる。

見学時間は約80分で、うち60分ほどが着席で説明員の方から解説を聞き、ビデオ資料を見てから現品の説明を受けるというスタイル。最後の20分ほどは自由見学という進行だった。

説明の内容はとてもよく構成されていて、事故の概要、発生原因、その結果の重大さ、再発防止活動について短い時間でしっかりと伝わるようになっている。

私は事故当時の報道をリアルタイムで日々見ていた世代なので、TVの映像で見ていた事故機や遺品の現物が持つ存在感に終始圧倒されていた。
乗客の書いた遺書に混じって、客室乗務員が不時着した場合に備えて、乗客に何を伝えるかを激しく揺れる機内でびっしり書き留めたメモがあった。
極限状況の中でも乗客のことだけを考えるプロ意識に頭が下がった。泣きそうな気持ちになった。

見学を通じて強く印象に残ったのは、ただ単に展示室を公開して事故の悲惨さだけを伝えるのではなく、説明員による話を通じて見学者の心に様々な思いや考えを呼び起こすことを重視しているということだった。

見学者25人に対する1時間の説明を、1日2回、毎日毎日無償で実施する。
その決意と、それを実行するための体制づくりをしているJALの、なみなみならぬ覚悟を感じさせられた。

場所は羽田空港に隣接したところなので、見学後はこんな感じで間近に飛行機を見ることもできます。
20150521.jpg

危険学・失敗学の考え方に共感する人や、航空安全に興味のある方にはおすすめの施設と思います。

JAL 安全啓発センター: http://www.jal.com/ja/flight/safety/center/


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ロボット掃除機 コーボルト VR100 [もろもろ]

20140513-1.jpg
フォアベルク社のロボット掃除機、コーボルトVR100を導入して8ヶ月ほどたった。
安売り競争を嫌ってあえて販路を絞っているらしく電器店ではほとんど見かけないし、ユーザーのレビューも少ないので人柱的に使用感などを書いておきます。
ステマじゃないので正直ベースで。
なお、これが初めて導入したロボット掃除機ですので、ルンバ等との使用感の比較ができません。ご了承のほどを。

■どんな製品?
仕様などは調べればわかることなので要点のみ。
・ドイツのフォアベルク(VORWERK)社はもともとカーペットのメーカーで、掃除機は1930年から開発。
・VR100はアメリカのNeato Robotics社のXV-11と基本的に同じとされていますが、モーター・ブラシ・フィルターがカスタマイズされ、サイドブラシ追加、バッテリーをリチウムイオンに変更。
…って掃除機の大事なところ全部手が入ってるじゃないですか。
レーザー測距器で部屋をスキャンして走行制御する先端技術はOEMで取り入れ、掃除する部分は自社の強みでカスタマイズするという「いいとこ取り」の精神が発揮されているようです。
・本体は丸型でなくD型で、ブラシの横幅を約24cmと大きく確保したのが特徴。
・走行方式はランダムではなく、部屋の形を把握して最小限の動きでカバーするというアルゴリズム。
LGのHOM-BOTスクエアや東芝のスマーボ(SAMSUNGのOEM)と同様の方針と思います。
・侵入制限は磁気テープを床に置く独特の方式。

■総合評価
「期待通り」でした。
といっても事前にいろいろネットで比較して、それなりにハイレベルな期待をしての導入だったので「なかなかやるな」という感じです。決してロボット掃除機として安い価格帯ではないので、納得いく実力でほっとしました。
と、こんな主観的な評価では誰の役にも立たないので、以下もう少し詳しく書きます。

■項目別評価
【ダスト除去力】
十分と思います。
何も障害物のないエリアは1回しか走行しませんが、綿埃や髪の毛などはほぼ除去できています。
といってもうちはフローリングと畳の部屋しかないので、そんなに厳しい条件ではありません。
ということで絨毯・カーペットについては無評価です。

そもそもフォアベルクはカーペット用の掃除機を作ってきた会社なのでその辺は抜かりなさそうな気はしますが、実力評価は別の方のレビューに委ねます。


【静音性】
静粛とはいえません。
ちょうど、従来の掃除機のようなモーター音に走行音が加わるので、隣の部屋で誰かが掃除機をかけているような音に聞こえます。ただし人間がかけるよりはややおとなしい音です。
昼間はさほど気になりませんが、夜に稼働させるとちょっとうるさいかもしれません。

吸引力を強くすることと騒音はある程度トレードオフの関係なのでこれはやむを得ないと思います。


【大きさ・デザイン】
見た目はほぼ「体重計」です。

幅・奥行 340mmは、もう少し小さくてもよいと思いますがわが家では許容範囲。
高さ 100mmは他社より不利ですね。レーザー測定部が出っ張っているためで、このせいで下に潜り込めない家具などが発生するかもしれません。


【かしこさ】
かなり賢い部類と思います。
最初に部屋を壁伝いに反時計回りに1周するのですが、障害物をよけて回り込むときにエッジブラシが通らないところが出ると、小さくバックして姿勢を直して再びエッジブラシをかけるような丁寧さがあります。
またドア幅程度の開口部の先は次の部屋と判断して後回しにするロジックも働きます。

家具に強く激突しないことを特に重視していたのですが、基本的に事前にレーザースキャンで障害物認識しているので避けてくれます。当たってしまった場合も、軽く接触する程度ですぐにバックします。

障害物を乗り越えたりして少々本体の角度が変わっても、壁と平行に走るようにすぐに補正されます。部屋の形と、今までどこを走ったかを正確なマッピングで記憶しています。

残念なことは、直射日光の強いときに、レーザー測距計が混乱して正しくナビゲートできなくなります。その場合はカーテンで日光を遮る必要があります。


【走行性】
段差については、カタログ通り2cmは軽々と乗り越えていきます。
扇風機の台座にまで乗り上げようとするのは予定外なのでちょっと困りますが(笑)。

苦手なのはコード類で、床に這っていれば巻き込まずに乗り越えてくれることもありますが、硬いコードが床から少し浮き上がっていると、コードを押してしまい接続されている電気製品が引っ張られて動いたりします。本体の姿勢も大きく変わってルートを見失うことがあります。
コード類は事前にどけておく方が無難です。

また、侵入防止の磁気テープを置けばきちんと動作しますが、テープの材質が滑りやすいためフローリングだと掃除機本体に押されて移動してしまうのが難点でした。
これはテープの底面に滑り止めのウレタンシートを貼って改善しました。


【メンテナンス性】
ダストボックスはこんな感じ。
20140513-2.jpg
緑のフタがフィルターで、パカッと外して埃を捨てます。(すみませんうっすら汚れが残ってますね)
ボックス本体は水洗い可。
フィルター自体に付いたゴミを取るには、普通の掃除機で吸い取るのがなんだかんだで一番便利。

ご存知のようにロボット掃除機は万能ではなく、普通の掃除機が必要な場面(家具の隙間やエアコンのフィルターなど)はまだまだあるので捨てるわけにいかず、こういう使い方もありなんでしょう。


■その他
・代理店に聞いた話では、フォアベルク社は毎年のように新製品を送り出すような会社ではなく、機種名はあまり変えずにマイナーチェンジをするようなところとのこと。
現に私が購入した製品は、ユーザー自身がファームアップデートできるようにUSB端子が追加される改良が入ったものでした。
もちろん大きな進歩があれば新製品ということになるのでしょうが、2012年発売時点で既にかなりの完成度になっているので、慌てて買い替えなくてもいいやと思っています。

・他のロボット掃除機も同じと思いますが、最初に床の上の物をどけてからの方が効率がよいです。
そこで、床が物やコードであふれてごちゃごちゃしている部屋は「面倒だから自分でやっちゃえ!」と従来の掃除機も使うようになりました。


■まとめ
以上のように、VR100は苦手な部分もありますが総じて期待通りに働いてくれています。
「あまり多機能でなくていいからしっかりきれいにしてほしい」というニーズの方に向いていると思いますので、検討の際は候補にされてもよいかもしれません。


<おまけ>
この製品は掃除が完了すると充電用のホームベースに自動的に戻る機能がついていますが、意地悪して本体をちょっと引っ張ってホームベースから数cm離してやると、慌ててホームベースに帰ろうと「摺り足」で戻っていきます。その振る舞いが可愛いので、つい毎回遊んでしまいます。

長くなってしまいましたが、このへんで。

--
(2014/08/31追記)
書いてから気付きましたが、最近、ヨドバシカメラでも取扱いが始まっていたようです。
これから認知度も徐々に上がっていくのでしょうか。
さらに、東芝はスマーボを販売終了し、自社開発の「TORNEO ROBO(トルネオ ロボ)」を投入。
ロボット掃除機界隈も熱い戦いが繰り広げられていますね。

危険学プロジェクト バージョンII 報告会に行った [もろもろ]

20140309.jpg
写真は六本木ヒルズの東北復興支援企画で展示されていたGoogleストリートビューカ―。

3月9日に開催された、危険学プロジェクト バージョンII の報告会を聞きに行った。
2011年から毎年行っているが、いつも新鮮な刺激があり、日々の物事の捉え方に危険学の発想が入り込んでくるほど影響を受けている。

危険学は現在進行形のプロジェクトであり、知見はどんどん蓄積されているのに、体系的に危険学を教える本はまだない。
報告会当日資料が最新の危険学を知るのにいちばん役立つが、残念ながら複製・転載禁止なので、3年ぶりに報告会内容のメモを書いておこうと思う。
(2011年のメモはこちら: その1 その2

※当初は特に気になった内容だけにしようと思ったものの、危険学プロジェクトの全体像が少しでも伝わればと思い、長くなりますが特別講演を除く全報告のメモをまとめて書いておきます。(グループによってはかなり端折っているものもあるので申し訳ありません)

危険学バージョンII 2013年度末報告会
2014.03.09(日) 13:00~18:10 六本木ヒルズ49階 アカデミーヒルズ

プログラム:http://www.sozogaku.com/hatamura/news/lecture,1388985009.html

○畑村代表挨拶
・2004年の回転ドア事故の後、「ドアプロジェクト」を始めた。誰が悪い、何がおかしいをやっておしまい、から脱却して、同じような事故を起こさないための別のアプローチをしようと思った。
・(危険について)根本的に世の中の考え方を変えようと思っているが、なかなかうまくいかない。そこで2007年に危険学プロジェクトを立ち上げて5年間活動し、2012年から危険学バージョンIIに入って丸2年が終わった。
・これは勝手連のプロジェクトで、国の金に寄りかからない。いろんな会社や個人のサポートがあって活動できている。もし金銭に換えたらすごい金額になる。
・消費者庁が始まり、今まで勝手にやってきたことが生きる。国も7年経って、いろいろと動き出している。
・みんなでやるのは大事。この毎年の報告会がみんなのパワーになっている。安全な世の中の元を作っているんだなと思ってやっている。


○畑村代表:2年目を振り返って
・原子力の取り組みは、航空(ベンチマーク)と比べてきわめて幼稚。これまであまり言わないようにしていたが、この頃はもっとはっきり言おうと思うようになってきた。
・原子力のグループ(12)は、震災の何年も前から議論していた。
・危険学の基本的な考え方
 参考リンク:http://www.sozogaku.com/kikengaku/gaiyou.php の図1参照
 1.従来は「ここを通りなさい」という道だけが示されている(=外部基準)。
 2.危険学では、まず「危険地図」を示す。どこにどんな危険があって、それをどうすれば回避できるかという「場所」「特性」「防ぎ方」が書いてある。
 3.そこに危険があるという旗を立て、遠くから俯瞰できるようにする。
 4.一人ひとりが遠くから全体を見て、自分の判断で危なくないゴールへの道を見つけられる(=内部基準)。
自らで考え、見方を変えて、自分の判断で危険を避ける。こうすることで、本当に事故を減らすことにつながる。
・現在の日本は、
 - 「絶対安全・安心」の追求
 - 自分ではなく誰かが安全を確保してくれる
 - 危険の存在そのものが “悪”
 という考え方をする面があるが、絶対に安全(事故が起こらない)とか、安心(危険を考えなくて良い)というのは不可能。
・危険学では、
 - 危険は危険と認める
 - 危険がどういう特性を持つかを知り、発現しない方策を考える
 - もし発現しても、被害を最小限に抑える
 という考え方。
 正しい対策は、どんなに調べて考えても、どうしても気付かない領域が残ることを想定して準備しておくこと。
・原発の場合、いろいろ考えて「安全とわかっている」ところは良い。「それでもまだわからないことがあるから危険」と言えない雰囲気があるが、それを言わねばダメ。そして、「危険だからダメ」ではなく、手を打っていかねばならない。
・その際に、具体的な事例から抽象概念に一度上り、本質を把握してからまた新しい事例に下りて具象化する。失敗、危険に至ったシナリオと似ているな、というシナリオマッチングで予見すること。
・昨年もいろいろな現場を見に行った。全体を理解する見方として、
 1.事前に学習していく
 2.実地検分する
 3.上空から俯瞰する
さらに、そこで終わらず
 4.改めて考える ことが大事。
・各グループの活動概要を紹介(略)

○グループ(4)情報とシステム
・近代から現代にかけ、農業の時代、軽工業の時代、重工業の時代と来て、今は情報・知識の時代。
・情報を利用したサービスが高度化し、情報にまつわる失敗・危険が出てきた。
・どうして情報伝達において齟齬が生じるのかを議論してきた。
・情報として伝達できるのは、記号化された形式情報のみ。観察者の脳内にある「意味情報」は、(言語や図などの記号)+(目や耳などに入ってくる刺激から知覚した意味)がセットになっており、個人間で異なる。しかし記号化したものしか相手に伝えられないために齟齬が起こる。
・受け取った相手の脳内で、新たな意味情報が作られる。個人間で異なる意味情報を “知” へ昇華させることにより、言葉やデータの伝達で普遍的な知識を活用できるようになる。

○グループ(7)遊具
・長野県木祖村に設置した、リング型ブランコや遊動円木、回転ホッピングシーソーの改良など。特にホッピングシーソーは、大人用の席を2人乗りにすることでバランス調整の自由度が増し、重労働だった調整ウェイトの脱着作業が不要になった。
・関連リンク:信州やぶはら高原 こだまの森 http://www.kodamanomori.jp/?p=1981

○グループ(8)子どものための危険学
・バージョンIIでは、「子どもの事故防止と防災」の情報発信に取り組んでいる。
・小学校での子ども向け授業、幼稚園・保育園の先生向け講演など
・活動詳細を伝えるホームページを運営: http://www.kikengaku.com/public/

○グループ(10)災害
・三現:現地、現物、現人 で、実態を調査
・災害を様々な視点、切り口で見てきた。特に、災害経済学、先人の知恵に学ぶ観点を提案したい。
・東日本大震災の際、国土交通省東北地方整備局の迅速・的確な初動が参考になる。
 関連書籍:『災害初動期指揮心得』¥350
 2015.02.22追記 現在、Amazon Kindle ストアで無償配布されています。
 (注:入手は東北地域づくり協会の販売窓口に問合せ http://www.tohokuck.jp/
・自然の力を「かわす」知恵が求められている。過去の地震や豪雨、山体崩壊などの災害のメカニズムを調査し、自然との共生について考える。
・信玄時代の治水技術など、先人の知恵を活かしていきたい。

○グループ(11)ベンチマーク
・巨大化・複雑化したシステムにどう向き合うかに注目し、安全ベンチマーク・リスク評価を行なってきた。最終目標は、レジリエント(しぶとく、しなやか)な安全・安心な道筋を見つけること。
・経済事故が台頭してきている。事故がないことを理由に利益追求型に比重が移り、いつの間にか技術・品質の条件が経済的理由に優先されて安全維持ができなくなっている。
・JAL123便と福島原発事故の共通点:想定を超える事象発生の結果、全破壊に至る
・航空は「落ちるリスクがある」が前提。100%絶対安全はない。あるのはリスクのみ。リスクを受け入れ、許容できるまで最小化し、これに備える。実体のない安全に依存し、壊れた時の次善策が欠如すると、必要以上に被害が拡大してしまう。

○グループ(12)原子力
・除染の「その場深穴埋め方式」の推進を2013年5月から始めた。
・その場深穴埋め方式とは、深さ2m弱の穴を掘り、周囲の表土のみを集めて埋める方法。前提として、放射性物質の多くを占めるCs137が、土粒に吸着されると固く結びついて容易に地下水に溶出しないという特徴を持つこと。
(例)25m四方(約200坪)の土地の一角に5m×5m×深さ1.6mの穴を掘り、周囲の表土(約5cm)を集めて埋める。穴を掘った時の土は、表土を削った面に覆土する。
・地表や地下への放射線の漏洩は十分低く抑えられる。また、現在のように表土を袋詰めし、中間貯蔵施設・最終処分場に運び、積み上げる作業に費やしている多大な労力が不要なため、除染の時間・コストを大幅に低減できると予想される。
・最初に各方面に情報収集したところ、なぜこの方式で早くやらないのか不思議なくらいだとわかった。次に、有力者への働きかけを行ない、次に実験を行なった。

1.情報収集
・放射線医学研究所、原子力研究開発機構福島技術本部、国立環境研究所へのヒアリングをしたが、いずれも「その場深穴埋め方式」が最も合理的である、という判断は共通であった。
・『海外の専門家からも「なぜ、そのような方式を採用しないのか」と不満の声が上がっている』『50年前の大気圏核実験による放射能の地下への浸透も1m以下である』等のコメントも得られた。
・福島市大波地区の仮置き場を現地調査。470戸分で16,000立方メートル、野球場ほどの面積。

2.有力者への働きかけ
・経団連や原子力学会、自民党原発事故究明小委員会などにアプローチ。
・谷垣法務大臣(2013年9月)、石原環境大臣(2013年10月)にも働きかけた。
・総じて、科学技術的に問題がなくても、実際にやるには様々な課題があり簡単ではないという反応。

3.現場実証実験
・福島県内に山林を持つ住人の協力を得て、2013年11月から実証実験を開始。
・深さによる放射線量の測定のために塩ビパイプを立て、地下水収集用のパイプも埋設。
・鉛直方向の線量分布は、汚染土を埋設した範囲にピークがあり、地表付近では平均1.9μSv/hと効果が認められる。
・実験は現在も継続しており、本報告では一部の結果のみ。結果が出たらまた報告したい。

・(科学的に有効でも)なかなか進まないのは、政治的・社会的な理由(住民の不安や、県外に出すべきといった心情面の配慮)だが、現実問題として470戸分の除染で野球場並みの中間貯蔵施設が必要な現在の方式では10万戸分の処理は不可能である。
・各専門家は「問題ない、正しいやり方」だと認めている方式。だが、社会は動いていない。

・原子力規制の在り方について。危険学から見て「想定以上のことは起こらない」というのは間違い。リスク許容値を定め、許容値以下に抑える。
・ねじ一本に至るまで厳しくチェックするような面があるが、細かな規程に偏ることなく、事故が起こっても全体として被害を低減できるような、レジリエントな(しぶとい)システムを目指すべき。
・日米の規制の比較をすると、欧米は大きくものごとを捉えるのがうまいのに対し、日本人は細かいところから積み上げていく。NRCの「良い規制の原則」を紹介。日本版「良い規制の原則」の提案をめざす。
関連リンク:Nuke Power Talk記事 http://nukepowertalk.blogspot.jp/2013/05/japans-nuclear-regulation-authority_17.html

○グループ(14)高齢者
・日本の人口ピラミッドは、2055年には75歳以上の高齢者が4人に1人になる。労働人口も大幅に減る。
・したがって高齢者を守るだけでは衰退する。高齢者がいろいろな所で働いたり、消費したりする社会が必要。
・高齢者の自立期間は9割、要介護期間は1割と意外に短い。自立期間をより元気でい続けられることが重要
 → 「元気高齢者」を増やすための活動が今後の方向性。危険マップの作成、集まる場の提供、元気情報の提供等。

○グループ(15)社会インフラ
・笹子トンネルの崩落事故は、工学的な報告しかない。コンプライアンスや不祥事の観点では、まとまった情報が全くない。検討の方向を変え、インフラの現状を考えている。知見としてまとまっていないが、現状を報告する。
・首都高は、高齢化(30年以上経過した路線が多数)、維持管理の難しさ(当初の想定より過酷な交通量)、交通上の課題(線形が悪い、渋滞多発しやすい箇所)等の課題がある。
・危険が現実化しているにもかかわらず、大規模更新(予防)へのコンセンサスが得られていないのではないか、と考え、事業者にぶつけてみたところ、適切に計画的に行なわれているとのことで、余計なお世話だったかもしれない。しかし、過去に戻す「補修」ではなく、現在の実態に合わせ、より適合した創造的で新しい保全をすべきではないか、といった議論をしているところである。
以上



特に気になったのは、グループ(12)が提案・推進している「その場深穴埋め方式」による除染方法について。
どこにでも使える万能の方法ではないし、解決すべき課題もある(例えば数百年にわたり埋めた場所を示す必要がある)が、この方式は多くの地域でより素早く除染を進める現実的な解になりうると思えた。
長期化する避難生活で亡くなる方も増加と報じられる中、早期の帰還に繋がる可能性があるこの方式には期待したい。

もし実験で期待どおりの結果が得られた場合、当然ながら危険学プロジェクトからの提言スタンスは「安全が確認できたからやりましょう」ではなく、例えば「この条件で安全確認できた、コストと時間はこれくらいでできる、危険はこのようなものが考えられ、こういう対応策を打つとここまでは低減できる」みたいな形になるのではないかと思う。
行政は、安全性・経済合理性・科学的リスク・社会的リスク(国内/国際)など総合的に考慮しなければならないが、どれか一つに偏りすぎた判断にならないようにしてほしい。

何より、この問題の当事者を始めとする日本の社会が、絶対安全はないことを理解し、等身大のリスクを認識して、その存在を受け入れ許容できるかどうかというのが「その場深穴埋め方式」の最大の課題である。
それはまさに危険学プロジェクトバージョンII が取り組んでいることそのものだと思える。

まずは、実地試験の最終結果が出るのを注目していきたいと思う。

オリンピック・パラリンピック招致のメッセージ [もろもろ]

知人に教えてもらった、東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会のサイトで公開されているメッセージを読み、あまりにも素晴らしい内容に言葉を失った。

全編を通じ、オリンピックの持つ力を称え、「ニッポン」の復活につなげたいという思いがひたすら綴られているのだ。
ところが不可解な点が2つあって、1つはこの素晴らしい文章がすべて画像として貼られていることだ。これではこの素晴らしいメッセージをコピペで引用することもできないし、英語圏の人が翻訳しようにも不便で仕方がない。もしかしたら引用や翻訳をされたくないのではないかとすら思えてしまう。
もう1つは、このサイトの英語版に載っているメッセージは日本語のものとは明らかに文章が異なっており、まるで日本人向けのメッセージと海外に向けたメッセージを使い分けたいかのように感じられることだ。

そこでこの招致メッセージの全文を参考に上げておこうと思う。

(オリジナルはこちら:日本語版英語版。なお 8/6 時点の魚拓はこちら:日本語版英語版

◆日本語版メッセージ

ニッポン復活オリンピック
ニッポン復活パラリンピック
TOKYO●2020

東京のためだけではなく、私たちのニッポンのために。
ニッポンの復活のためのオリンピック・パラリンピックを、東京に。

オリンピック・パラリンピックは夢をくれる。
そして力をくれる。
経済に力をくれる。
仕事をつくる。
それが未来をつくる。
そして世界の意識をニッポンにつれてきてくれる。
今、それがニッポンには必要だ。

2020年までにあらゆるジャンルのニッポンを復活させるために。
日本人みんながひとつの夢をもつ。
そのことをためらう理由はどこにもありません。
ニッポン心の復活を
スポーツの力で。

(以下、「全文を読む」をクリックをすると巨大な日の丸に続いて表示される部分)

私たちはいつから目的をもつことがヘタになったんだろう。
私たちはいつから勝たなくてもいいと
斜に構えて挑戦することから逃げるようになったんだろう。
私たちはいつから経済大国という言葉に甘えて
情熱を特別なものにしてしまったんだろう。
たくさんの困難にあった今、
復興と戦う今、
私たちは未来とも戦わなければいけない。

そのことを忘れないでください。
現在を理由に未来を閉じないようにしてください。

未来が何を失いつつあるかを
私たちはごまかしながら生きていないか。

このままだとこの国は世界から忘れられてしまうかもしれない。
今何かをしなければ、
この国の未来や子供たちの自信を奪うことになるかもしれない。
誇るべきものを誇るために、
勝つべきものを勝ちとろう。
未来のために。
東京にオリンピックを呼ぶのではない、ニッポンに呼ぶのだ。
オリンピックは夢をくれる。
そして力をくれる。
経済に力をくれる。
仕事をつくる。
それが未来をつくる今になる。
そして世界の意識をニッポンにつれてきてくれる。
今、それがニッポンには必要だ。
復活を世界にアピールするために。

2020年までにニッポンを復活させるために。

もう一度言います。
これは東京のオリンピック・パラリンピックではありません。
これはニッポン復活のオリンピック・パラリンピックなのです。

私たちは具体的に東日本に経済効果が及ぶような
オリンピック・パラリンピックにしたいと切望しています。
招致アクションそのものがきちんと
日本全体を活性化させるものにしたいと願っています。
そのためにたくさんのアイデアを
広く皆様にもお願いしたいと考えています。
世界の競争で勝てる立候補都市、東京で
日本全体に価値のあるオリンピック・パラリンピックをつくるのです。

今回の招致レースは勝てる可能性が高いと言われています。
ニッポンは今限りなくリアルなところにいます。
2013年9月に開催都市が決まります。
この一年が勝負になります。

私たちの心に火がともり、
それが日本を熱くひとつにする炎になるように。
ひとりひとりの正しい気持ちが
ニッポンの力になるために。

私たちの心に火を。
私たちの夢に火を。
その日をニッポンに。
その炎を世界に。


◆英語版メッセージ

TOKYO 2020

Japan has a long and distinguished
history as part of the global sporting community.

Our athletes first competed at the Olympic Games exactly 100 years ago, in 1912.

We proudly hosted the Games in Tokyo in 1964, demonstrating the power of sport
as a domestic catalyst for change and international agent for friendship and
understanding.

Now, we want to renew the success. We want to use the 2020 Games as a catalyst
for development and progress at home, and an instrument for bringing the world
closer together.

This bid has been given extra importance because of the tragic 2011 earthquake
and tsunami. We have a responsibility to inspire and unite the entire population
behind a common goal - and a vision for the future.

Tokyo 2020 will see new sporting and other development in the world's largest
and most spectacular and urban areas. And global friendships renewed by
Games of excellence and real excitement. Together, with new generations.

ぜひ比較してみてほしい。


**
2012/8/7 06:10 本文少し手直ししました。

科学リテラシーは一日にしてならず [もろもろ]

20120304.JPG
鎌田浩毅著「地震と火山の日本を生きのびる知恵」(メディアファクトリー、2012/03/02)を読んだ。

火山学・地球科学の第一線の研究者で「科学の伝道師」も自任する教授が書き下ろした本だから、一般の人向けにわかりやすく3・11後に日本がどう変わってしまったのかを解説する本だろう...と思って手に取ったのだが、読み進めていくとどうも少し違う。
冒頭は確かに地震や火山について、最新の知見をまじえた科学的な話がわかりやすく展開されるのだが、中盤以降はずっと地球科学的な時間軸の話や科学と人間の関係など、話題がどんどん広がっていき、なかなか着地点が見えないのだ。
終盤まで読んで「あ、こういうことを書きたかったのか」というのが見えてきたところで、最後の最後にその答えがしっかり書かれていた。
(買う前に立ち読みでどんな本か掴みたい人は、「おわりに」から読むのがいいかもしれない)

まず、この本はハウツー本ではない。
地震や火山の正しい知識は得られるが、「ではどうやって自分や家族を守るのか」「何を準備しておけばよいのか」などの答を探している人にとっては、家具は固定しておこう、くらいしか見つけることはできない。
しかし、そういう「あれこれハウツーを探し求めてしまう」「他人の情報に頼ってしまいがち」な人こそ、この本を読むと良いのではと思った。

著者は、地球のダイナミズムは人間の力では到底どうにもならないスケールで動いていることを極力平易に説明した上で、そういう自然とどう向き合うかという心得や考え方(著者は「視座」というより的確な一語を使っている)をこの本で説こうとしている。
これはある意味危険な挑戦で、つまり大雑把に要約すると
「これからは大きな余震、内陸直下型を含む誘発地震、火山の噴火、東海・東南海・南海の連動型地震を想定して生きねばなりません」と煽る一方で、
「科学は力を発揮できる部分もあるが限界もあるので、過大評価は禁物です」
「長い目で見れば日本はどこでも地震や噴火のおそれがあるけど、災害のない多くの時間は恵みをもたらすのだから、人間が本来持っているしなやかな柔軟性で乗り切っていこう」
みたいな文脈になってしまうのだ。
もし、上記のような著者の狙いが読み取れないと、何を言いたいのかわからない、という感想になりかねない。

しかし、科学リテラシーの下地のある人(理系思考のできる人、と書いた方がわかりやすいけど、ちょっと語弊があるので)であればどれも納得できる話ばかりで、自分のこれまでの自然観と融合させる(「腑に落ちる」感覚といえばいいだろうか)のは容易だろうと思う。

科学者であり読書家でもある著者の中では、こうした視座が確固としてあるのだろう。
世の噂やマスコミの報道に流されたくないような人は、こうした科学リテラシーを養える本は新鮮に映るのではないだろうか。


最後にちょっとした指摘を。
本書P53で、400kmの距離をP波(7km/s)とS波(4km/s)がどれだけの差で到達するかの計算で、400÷(7-4)≒130 とやっているのは明らかに間違い。
400/4-400/7≒43 とすべきだった。
一般向けの本だからこそ、こういう点は注意してほしい。重版や文庫化の機会があれば直るといいのだけれど。

アップルのサポートに電話した [もろもろ]

先週、iPod nano(第1世代)交換プログラムの案内メールがアップルから届いた。当たりというか外れというべきなのか、古い方のiPodが交換対象に見事に該当していたのでさっそく申し込んだ。
ところが待てど暮らせど宅配業者の集荷が来ない。サポートサイトで修理状況を照会しても「サービス依頼受理」となっているし、申し込み殺到で遅れているのかな、くらいに思っていたら、どうも「14日にWebで申し込んだ人はシステム障害で回収手続きが進んでいない可能性がある」とあちこちに書かれているではないか。
Webで再申請しようとしても「すでにお申し込み済です」となって先にも進めない。
ということで、本日アップルのサポートに電話して、めでたく集荷の再手続を済ませました。

と、ここまでのトラブルの状況は褒められたものではないが、今回初めてアップルのサポートに電話して「へえ」と感じたのは、なんというか対応が好印象だったこと。
もちろん担当の方の個人差はあるはずだが、良かったことなので書いておこう。

電話なので、口頭で製品シリアル番号や電話番号などをやりとりすることになるが、その度にゆっくり丁寧に復唱されるのはマニュアルどおりだろう。サポートに定評のある会社ならきちんと教育していることなので珍しいことではない。あまりに丁寧なので、ちょっと面倒に感じないこともなかったが、老若男女いろんなユーザーがいるだろうからこれは仕方ない。

おやっと思ったのは、交換プログラムの対象品であることをシリアル番号で再確認した後のことだ。
「それで...お客様のところでは発熱などの問題はございませんでしたでしょうか?」
「あ、ぜんぜん大丈夫ですよ」
「ああ、良かったです。それでは回収させていただく日ですが...」
みたいな感じのやりとりがあった。
文字にするとそれだけだが、そのときだけ、担当者の方の口調が心配そうなトーンになり、私の返事を受けて安堵しているようなトーンに変わったのだ。

発熱の問題がなかったかどうか確かめるのはお約束だろう。ただ、申し訳なさそうで心配そうな声色は、多少の誇張はあるかもしれないが、まったくの演技ではなく、気持ちもきちんと入っていた(ように私には聞こえた)。
それは安堵の声のときの方が顕著だった。

そもそも異常発熱・発火の問題はきわめて低い確率なのに、おそらくひっきりなしに掛かってくる初代 iPod nano ユーザーの一人ひとりに対し、こんな風に気持ちの籠もった(ように聞こえる)心配と安堵の台詞をこの人は繰り返しているのだろうか。
あくまで私にあたった担当者だけの話かもしれないけれど。

アップルのサポートの評判の良さは聞いていたが、それは対応の中身だけではなく、案外こんなささやかなところにも表れるのかもしれないな、思った出来事だった。

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