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Technics EAH-TZ700、理詰めで生まれた至高の音 [オーディオ]

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理想のスピーカーはどんなものかといえば、好みは人それぞれという話とは別の次元で、エンジニアリング的な理想のスピーカーというものが明確に存在する。
それは高忠実再生、つまり入力された信号を瞬時に、同じ波形の音に完璧に変換するものだ。
瞬時に再現するから音の立ち上がりが早く、消えるときもスムーズ。余計な振動による付帯音もない。
オーディオ用語では「トランジェント(過渡特性)が良い」と言ったりする。
トランジェントが良いというのは、音の分離の明確さや定位の良さにもつながる、重要な要素だ。

ではそんな理想のスピーカーにはどんなドライブユニットが必要か。
それは信号を素早く空気の振動に置き換えるために
 ・できるだけ剛性の高い振動板を
 ・できるだけレスポンス早く、まっすぐにスムーズに振動させる
ことが重要で、さらに
 ・帯域で複数ユニットに分割させない(フルレンジ)
 ・可聴域に固有振動数を持ってこない
も忠実再生には大事な特徴になる。

そうすると必要な要素は以下のようなものになる。
 ・なるべく硬くて軽い振動板
 ・素早く大きく振動板を動かす強い駆動力
 ・振動板を精度よく平行に動かし、速やかに制動する機構
 ・大振幅のときの空気のダンパ効果を弱める気流コントロール
 ・固有振動数の調節

はい、これらをスピーカーではなくイヤホンのドライバーユニットとして真面目に追求した製品が「EAH-TZ700」といえます。
「なぜTZ700は音がいいのか?」という疑問には、オーディオの一般論で説明できてしまうのだ。
この製品の技術的な説明は検索すればいくらでも出てくるのでここでは詳細に引用しないが、イーイヤのサイトに掲載された開発者インタビューやPHILE WEBの記事がわかりやすいと思う。

 新生Technics 初のハイエンドイヤホン EAH-TZ700 開発者インタビュー!(e☆イヤホン)

 テクニクス最上位イヤホン「EAH-TZ700」は “現代の名機” だ! 50数年の技術が小型筐体に凝縮(PHILE WEB)


さて、前振りはここまでにして、10日間ほど聴き込んだ時点のTZ700のレビューというか感想を。

「いちばん好みの音」を出すイヤホンは私にとってANDROMEDAだったが、
「いちばん理想的な音」を出すイヤホンはEAH-TZ700だと思った。
フルレンジのドライバ1基という構成らしい、ワイドレンジで音の繋がりが良く、位相差のない音。
同様の思想はSHUREのKSE1500にもあったが、あちらはコンデンサー式の振動膜で繊細な表現が得意だったのに対し、Technicsのこちらはボイスコイル式の大ストロークでドムドム押し出す音が出せるのが大きな違いだろう。音域の全てにおいて力強いのが特徴だ。
特に締まりのある低音の質の高さは、ある意味スピーカーよりも理想に近いと思える。

初めは分離感は普通の高級イヤホン(←普通の高級イヤホンって何だ?)並みだと思っていたけど、いやいや実はこれめちゃめちゃ解像度高い。
音の粒立ちとか特に強調もされず自然に鳴っていたのですっかり騙された。
打ち込みマシマシなアニソンを聴いたら、全部分離されて音の洪水みたいに迫ってくるので焦った。ちょっと聴き疲れしちゃいそう。
逆に打ち込みが多すぎないデジタル曲(CorneliusやDaft Punk)は、アーティストの意図が忠実に再現されている感じがして爽快だった。

基本的に音源を選ぶイヤホンではないものの、アコースティックな演奏を録音してデジタルマスタリングした音源もとても良い。
私の好きなFOURPLAYの、ハーヴィー・メイソンのバスドラムの鋭いアタックとネーザン・イーストの唸るベースラインがこれほどブルーノート東京で聴くライブに近い音で再生できるイヤホンがあるとは思っていなかった。
録音されてない音が出るはずないので「どこにこんな音が入ってたんだよぉ...」と驚きつつ片っ端から聴き直ししている。

DAPは癖のないものを使うのがいいと思う。
私のは現在、AK120を某所に頼んでバランス追加の魔改造を施したものなので少しズルだけど、全体にニュートラルなDAPで十分な低音が出ているので、低音を増すような傾向のプレイヤーを使うと大変なことになりそう。
低音過大だというレビューも見かけるけど、DAPには注意が必要と思う。

あ、あと、高域が刺さるという感想も見かけたが、私はもうモスキート音が聴き取れないのでわかりません。高音に敏感な人は試聴してお確かめくださいな。

イヤーピースは付属のものを使っているが、4種類のサイズは気持ち小さめに寄せているので、耳穴の小さい人に優しいセットになっている。
私は最大のものでちょうど良かったが、いずれもっとフィットするものを探してみようかなと思う。
またケーブルも付属のものしか試していないが、タッチノイズが少しあるので、今は耳掛け式にして回避している。

今のところ、店頭販売のみ・値引きなしという売り方なので入手しにくいが、近くで試聴できる環境がある方はいちど試してみるといいと思う。
最後に好みに合うかどうかは人それぞれだが、音質が良いことだけは誰にでもわかる、稀有な製品であることは間違いない。
私は試聴した日は我慢してそのまま帰りましたが、1週間しか耐えられなかった....
(後悔はしていない、むしろ幸せ)

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2020.01.16 PHILE WEBの記事へのリンクを追加しました


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