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【保存版】Roonって何? [オーディオ]

◆はじめに
高音質サブスクのQobuzがいよいよサービス開始ということで盛り上がっていますが、これに関連して「Roon」というソフトが気になっている人もいると思います。
そこで以下、Roonとは一体どんなものか、わかりやすさ重視で紹介してみようと思います。

スクリーンショット 2023-11-26 144032.png

◆Roonって何なの?
総合音楽管理・再生ソフトです。
ローカルサーバーにある手持ちの音源と膨大なストリーミング音源を1つの環境に統合し、好きな音楽を起点に新たな音楽への出会いを広げ、それをネットワーク内のプレーヤーに高音質で再生させることができます。

◆どんな人におすすめ?
以下の条件にあてはまる人に特におすすめです。
・手持ちの音源ライブラリが既にそこそこある(アルバム数10枚~数100枚以上とか)
・ネットワークオーディオ環境を構築している、または構築したい
・「Qobuz」「Tidal」「KKBOX」いずれかのストリーミング音楽サービスに契約している
・高音質な再生に興味がある

◆始めるのは簡単?
アプリのインストール後の初期設定はやや複雑ですが、いったん音が出る状態まで設定できれば、その後はとても使いやすいソフトです。
設定にあたっては、次に説明する「Roonを構成する3要素」を理解しておくと役立つと思います。

◆準備するものは?
Roon導入時は以下の3つの要素を準備しておく必要があります。

1. 音源の保管と送り出しをするサーバー(ただし演算能力が高い必要あり)。RoonではこれをRoon Serverと呼びます。以前は「Roonコア」と呼ばれていたので今でもこれをコアと言う人は多いです。
2. Roonのメインのコントロールアプリ(Roon Apps)をインストールするPCまたはスマホやタブレット端末。Roon Remoteと呼びます。
3. ネットワーク再生に対応するオーディオ機器。PCにUSB DACとして接続して再生できれば問題ないですが、「Roon Ready」に対応した機器であれば利便性や音声でさらに有利になります。

とりあえず最初は、2のPCが1のサーバーを兼ねるセッティングでも環境構築可能です。

 Roonのしくみ: https://roon.app/ja/how-roon-works

◆で、Roonってそんなにいいものなの?
とてもいいものです。上記のおすすめ条件を複数満たしている人ならば、きっと満足するはず。
Roonが提供する価値を「音楽の海」と評した先人がいましたが、まさに音楽の広大な海を自在に泳ぎ回るかのような体験が得られます。しかも極上の音質で。

◆具体的にはどのへんがすごいの?
他のソフトに比較して優れていると思われる点を挙げると、
・音楽データ管理がすごい
アーティストや楽曲の膨大なデータベースから、写真やプロフィール、発売日、作詞作曲編曲者、共演者、ジャンル、歌詞、カバー曲などメタデータを取り出し、それらを手持ちのライブラリ音源・ストリーミング音源と相互に紐づけてくれます。結果、自分のライブラリから、クレジットに載っているアーティストや別バージョンの録音、類似のアーティスト等に自在に飛び回ることができるようになります。
最近はストリーミング音楽サービスの画面でも似たことができるようになりつつありますが、Roonはこれを専門に2015年から改善を続けている先駆者であり、データの充実度や快適さが段違いです。
スクリーンショット 2023-11-26 152041.png
一例。別の録音がある曲はこんな感じで録音数が表示され…

スクリーンショット 2023-11-26 153546.png
数字をクリックすると同じ曲の別録音の一覧が開く

・音楽再生の使いやすさがすごい
再生コントロールはスマホやタブレットやPCから行いますが、小さい画面から大きい画面までほぼ同じ操作性で、しかも複数ユーザーが別々のオーディオ機器にストリーミングやローカル音源をそれぞれ流すような芸当も可能。「Roon ARC」というアプリが追加され、外出中でも自宅と同じような使い勝手でサーバーや音楽ストリーミングから曲を聴けるようになりました。

・音質へのこだわりがすごい
そもそも連携するストリーミング音楽サービスが、ハイレゾ高音質に対応している Tidal、Qobuz、KKBOX だけとなっています。ネットワークオーディオ機器の再生能力に合わせ、最大のサンプリングレートにアップコンバートする機能も持っています。(そのためサーバーには高い演算性能が求められる)
また所有するオーディオ機器が「Roon Ready」に対応している場合、さらに高音質なRAATという転送プロトコルで音楽再生できるようになっています。

◆でもお高いんでしょう?
有償です。サブスクリプション(毎月払い)または生涯ライセンス一括払い方式になります。
高いかといえば、まあ無料が主流の音楽管理・再生ソフトにわざわざお金を払う時点で高いかもしれません。
最初のトライアル14日間は無料ですので、どんなものか試してみて、満足度に見合うと思ったら続ければいいと思います。

私個人の体験では、新聞購読料とかと比較したら金額も安いし得られる満足度も圧倒的に高いので納得して使い続け、あるとき「これずっと使い続けるんじゃね?」と思って生涯ライセンスを支払いました。

◆まとめ
長くなってしまいましたが、初めに書いた「どんな人におすすめ?」に当てはまる人は、Roonを試してみる価値はあると思います。
ここでは初期設定の詳しい方法などは紹介しませんでしたが、丁寧に説明しているサイトは多くありますので、ぜひ挑戦してみてください。

 Roon: https://roon.app/ja

それでは良い音楽ライフを。


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ONSO 05 寸評 [オーディオ]

久しぶりのイヤホン用ケーブル導入。
2023-08-05 23.01.37.jpg

ONSO 05シリーズの MMCX/2.5mmバランス端子版。(iect_05_bl2m_120)

プラグを4.4mmにしなかったのは普段使いがMojo2だったから。
3.5mmへの変換プラグのサイズを考えると、あえて2.5mmバランスにした方が小さくて取り回しがいいと思ったのだ。

かといって最初から3.5mmアンバランスの配線にするともったいない。

私はもともとバランス接続の方が良いと思っていて、Mojo2というかCHORD製品だけ例外的にアンバランスの音質に満足しているのだ。そんな理由からの2.5mmバランスの選択。



ここからは音質の寸評。というかレビューにもならない自分用のメモ。

巷で言われている通り、ONSO 05 はTechnics EAH-TZ700 のケーブル交換に適していると思う。
純正ケーブルとほぼ同じ音の傾向で、特にデメリットを感じない上位互換品といえる。

具体的には、TZ700+純正ケーブルの特徴である音の厚みを少しだけ抑えて軽くし、描線をやや細くして隣接する音同士の重なりを減らす感じ。

線を細くするといっても、鉛筆でいえばBの太さからHBの太さに変えた程度の差で、2Hや3Hみたいに繊細すぎて音が痩せるわけではない。
音の強さやダイナミックレンジなどは変わらないので、純粋に解像感や明瞭度が向上する。

個人的にはMojo2+PolyにTZ700を差す今のメイン環境では、純正ケーブルよりも ONSO 05 の方が格上と判断して、あっさり乗り換えることにした。

TZ700 の純正ケーブルの音が好きで、さらにもう一段のクリアさがほしいような人にはお勧めできるケーブルだと思う。



(余談)
ONSO 05 の芯線の素材が、PCOCCをメインとした銀メッキOFCとのハイブリッド構成と知って、納得できるものがあった。

TZ700 純正ケーブルの素材はPCUHDとOFCのハイブリッド。PCUHDは、古河電工のPCOCCの後継品にあたる高純度無酸素銅で、OFCは汎用の無酸素銅。
ONSO 05 で使用されるPCOCCは既に生産終了している貴重な材料で、連続単結晶構造を取っており、PCUHDの上位互換ともいえる。

そこに銀メッキOFC線を合わせることで、繊細な音の成分が加わることが期待できる。

実際に聴いてみた音と、素材から想像される音の傾向が矛盾しないのだ。
ああなるほど、そういう素材だったのねと後から納得した。

そこでもう1つ思ったのが、PVCの被膜の色。
緑色の仕上げのケーブルは珍しいなと思ったのだけど、これ、銀メッキ線の緑化を目立たなくするためのデザインですね。

リケーブルがオーディオマニアにとって身近なものになって約10年。
こんなところも進化しているんだなと変なところに感心してしまった。



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EAH-AZ80、強い。 [オーディオ]

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6月15日に発売された、Technics EAH-AZ80 は予約購入した。
Twitterで「AZ80」がトレンドワード入りするなど、びっくりするほど初動から評判が良く大ヒット製品になりそうな勢いが感じられる。
実際ほとんどの人が絶賛しているように弱点らしい弱点が見当たらない名機だと思う。

まだ聴き始めのバーンインも進んでいない状態だけど、この後どう変化していくかの期待も含め、初期の感想をメモしておこうと思う。


◆装着感
まずAZ80の装着感は、皆さん言うように確かに素晴らしい。
コンチャフィットと銘打った独特の形状のおかげで、圧迫感がないのに安定して動かない。
軽く感じる。

密閉性はイヤーピースで確保することになるので、低音が弱いと感じる場合はイヤーピースを替えて合わせこむ必要がある。
最初、低音が弱いかと思ったが、イヤピを1サイズ大きめにしたら必要十分な音が出ていることがわかった。ここは気をつけよう。

◆ノイズキャンセリング
ノイキャンの評価はお手上げ。
これまでANC付きのワイヤレスイヤホンはKEFのMu3しか所持したことがないので、AZ80のANCの効き具合は正直よくわからない。
静かな部屋でANCを強くかけると少し圧迫感を感じるが、雑踏ではそれほど気にならないし、アプリでON/OFFや強度を調整できるので、自分に合った使い方を模索できる。
なのでそれでいいと思っている。

ただ、ノイキャン付きのイヤホンだとS/N比の評価がちょっと難しい。
なんだか人工的な無音感になるので、アナログオーディオの静寂感とは質が違う。
このへん、TWSは純粋なオーディオではなくデジタルガジェットの一種なんだなと思わされる。

◆音質
ここから音質について。
環境は、DAPからLDAC接続。イヤピは付属品を使用。静かな場所でANCはオフ。イコライザーはかけずダイレクト設定、という条件。

第一印象は、「解像度高い」だった。
中高域がクッキリ聴こえるので、一聴して音質が良いと感じやすい。
低域はきちんと出ているが、中高域の邪魔はせず、切れの良さもまずまず。
(低音の応答性はバーンインで向上する場合もあるので、さらに良くなることを期待)

毎日Mojo2+PolyにEAH-TZ700差して聴いてるおっさん耳での比較では、さすがにAZ80とTZ700の音質のレベルは別物。パンチ力とか、低音を完全にドライブしているような安定感においてはやはりTZ700が上回る。
ただ、帯域バランスを高忠実にしつつもややウォーム寄りなチューニングや、低域のボワ付きを抑える方向性など共通性は感じられる。
バーンインでエッジがこなれてきて、もっとパンチ力が出るといいな、と今後の変化に期待している。


◆所感など
私は機能の評価はできないけど、TWSの機能を重視するユーザーが機能面の魅力からAZ80を手に取ることも多いと思う。
そういう一般的なユーザーにも、わかりやすくオーディオ的な音の良さを実感してもらえるという点で、とても意義のある製品だと思う。

そしてハイエンド有線イヤホンであるEAH-TZ700と比較すると、絶対的な実力差はあるけれど、考え方に共通性のある音作りと上質感を備えていて、コストパフォーマンスにも優れていると言っていいと思う。
AZ80、強いなと感じた。


ともかく、AZ80は機能性でも音質面でも手持ちのKEF Mu3を超えることは確実なので、価格に見合った製品でよかった。
TWSの機能重視ではなく音質重視で期待を持って無試聴購入したのだが、好みに合って、また期待した水準の音質だったのでとても嬉しい。
(しかしMu3もANW01も無試聴だったので、これで3台連続…ちょっと無謀)


使い込んでからのAZ80のレビューは、気が向いたらまた書くかもしれない。
きっとたくさんの人が書くだろうから、よほど思うことがない限り書かないかもしれない。

それではまた。

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(2023/08/20追記)
上記で1ヶ所訂正。
といってもAZ80とは直接関係なくて、KEF Mu3の話。

「AZ80は機能性でも音質面でも手持ちのKEF Mu3を超えることは確実」と書いたけど、音質面のMu3は今でも引けを取っていなかった。
AZ80のクッキリした明瞭感とはタイプが異なり、より音の調和を重視した上質な音づくり。
いつの間にか値上がりしていたのは残念だけど、Mu3もやっぱり良いTWSです。

Mu3のレビューはこちら


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Mojo2+PolyでAK120がようやく引退できた話 [オーディオ]

Mojo2とPolyが到着して3ヶ月強が過ぎた。
私にとっては初めてのChord製品。

ポタアンとしてではなく、DAPとして運用するつもりでPolyと一緒に無試聴でお迎えしたのだが、結果としては期待通りかそれ以上。
Twitterに書いた感想や音質レビューなどをこちらでまとめておこうと思う。

2022-04-24 10.21.04.JPG

◆操作性
正直いってDAPとして見るととっつきにくいと思う。
(初代のMojo+Polyのときは、お店で借りて試聴しようと思ったら結局再生まで辿り着けなかった)
今はスマホとの接続支援アプリ(Gofigure)もあるのでだいぶ楽になったらしいが、それでもPolyの振る舞いが理解できるまでなかなかうまく再生できず苦労した。
音楽再生アプリ(MPD:Music Player Daemon)が認識して一度再生できるようになると、次回からは割とスムーズに使えるようになる。

ちなみにMPDは多くは試していないが、Rigelianが割と気に入ったので今はそれを使っている。

ディスプレイのない、光る4つのボタンだけの操作体系は、意外とわかりやすい規則性がありすぐに覚えることができた。(本当に素っ気ないUIだと思うが)
電源ONのときにボタンが次々と光るが、これはメニューボタンを押していったときの各機能の設定状態をおさらいしてくれていることもわかった。

ネットの反応では、Polyとの互換性のために残されたmicroUSBコネクタへのネガティブな意見が目立ったが、別に音質に影響あるわけでないし(多分)、コネクタの天地があるのがちょっと不便なだけでさほど問題には感じない。AK120の古いケーブルも使えるし(笑)。

操作性は慣れで気にならなくなるものも多く(ユーザーの慣れに期待するのもどうかとも思うが)、あまり困る場面はないが、ハードウェアの再生/停止ボタンだけはあったらよかった。
一時停止したいときにもスマホを取り出さないと止められないので。
ファーム改良で、再生中は電源ボタンのクリックで一時停止できるようになると嬉しいかもしれない。


◆音質
使い始めてちょうど1ヶ月の頃にこんな感想を書いていた。

Mojo2のFPGAから出る音は、どのメーカーのDACとも傾向が異なって聴こえる。

オーディオ業界で時折目にする「原音再生」という表現は、たいていは「信号忠実再生」の意味で、入力した信号をいかにそのまま増幅したり振動板を震わせて音に変換したりするかを指している。
しかしCHORDはMojo2で文字どおり「本当はこういう音だったんだろ?」という意味の「原音再生」をやろうとしているように思える。
そのために、どういうロジックかはわからないがFPGAを使って音楽のデジタルデータをまるごと計算に掛け、徹底的なノイズシェービングを行っている。
結果、「音楽を構成するデータ」は崩さず、音楽に関係ないと(CHORDがそう判断した)不要なデータがクレンジングされた、圧倒的なS/N感と透明感を備えた音が出てくる。

ノイズシェービングの効果は、音質の良い音源よりもあまり音質が良くないと感じていた音源の方がわかりやすい。
音が変わったという不自然さは感じさせずにとにかく聴き取りやすくクリアな音になっていて驚く。

また全ての帯域でクレンジングすることで、音質劣化しないイコライザー「UHD DSP」や左右のチャンネルをミックスする「クロスフィード」といったウルトラCの機能も比較的容易に実現できるのだろう。


この印象は3ヶ月経った今も変わっていない。

Mojo2の音を聴いていると、
「色付けは絶対にしたくない」
「音楽成分以外のノイズを徹底的になくしたい」
という2つの意志が働いているようだと強く感じる。
Chordがそう考えているだろうことと、それが結果として実現できていることが、出てくる音から本当に感じ取れるのだ。

それを裏付けるような記事がこちら。
この記事は後から知ったものだが、まさに先述したような思想が技術に反映され、そして技術の成果が製品でわかるという稀有な例だと思う。

[AV Watch]
 ・小さな最強DACアンプ、さらに進化。CHORD「Mojo 2」を聴く(2022.03.17)
 ・Hugo/Mojo/DAVE、CHORDは何故汎用DACを使わないのか? キーマンがこだわりを解説(2016.03.07)


Mojo2がHugoシリーズやDAVEから受け継いでやっている、FPGAの計算力できわめて細かいフィルタを使って音を分解して徹底的にノイズシェービングするDA変換手法は、
「音源をリアルタイムにデジタルリマスタリングしながら再生している」
と喩えてもよいものではないかと思う。

これが、冒頭の『ChordはMojo2で「忠実再生」というより「本当はこういう音だったんだろ?」という意味の「原音再生」をやろうとしている』という印象に繋がっているのだ。
それを携帯型のアンプでやってしまうところが、なんだか破格のものすごさだと思う。
どのくらいすごいのか、比較する対象もないのでよくわからない。

◆ハードウェア
ちなみにMojo2ではハードウェアでの音質追求もこだわっているようで、理解が追い付かないが、デジタルDCサーボ回路によるDCカップリング、パルスアレイDACの改良、カップリングコンデンサの廃止などで歪みやノイズ低減を図っているらしい。
3.5mmアンバランスだけなのにノイズがなく高音質という結果が出ているので、先ほどの音源データのクレンジングとハードウェアのノイズ低減効果の両方がきちんと効果を上げているということなのだと思う。
あと個人的には、起動プロセスの最後と電源オフを押した直後に「カチッ」という音がするのがとてもいい。
これは公開資料にも見当たらないが、電源オンオフ時に出力段にポップノイズが入らないようにするためのリレースイッチの音で、据え置きオーディオなど高級機ではよく使われるものだが、Mojo2のような携帯オーディオではちょっと珍しい。
安心感があるし、高い部品だけれどリレースイッチを使おうという開発陣のポリシーが感じられるのもいい。


◆おわりに
これまでいくつかのDAPを試しては、結局AK120(バランス化改造済み)の音が好きだとなってAK120も使い続けるという状況だったのだが、Mojo2+PolyでようやくAK120が現役引退することができました。
自分の理想にほぼ近い音質のDAPに出会えた感じがします。


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KEF Mu3のレビュー(続き) [オーディオ]

ANW01の感想で KEF Mu3 との比較を書いた割には、Mu3はファーストインプレッションしか書いてなかったことに気付いた。

なのでMu3のその後について。

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Mu3、国内ではほぼKEF公式の通販以外に販路がなく、試聴機も直営店にしかない模様。
未だに本気で売る気があるのかどうか判然としないが、製品としてどうかというと、特に音質において名機の1つであることは間違いない。


【音質】
 まずバーンインについて。初期の音出しでは「そつなくまとめた綺麗なサウンドだな」程度に思っていたのが、20時間くらいからどんどん音が良くなってきて、50時間くらい経ったところでは驚くほどの音質に化けた。

切れ味の鋭い高速・高分解能な音が出るようになり、キックドラムなどパンチのある低音も有線イヤホンのように余裕で再生。トランジェント特性の高さを強く感じさせる。

また、音量を絞っているときは全体に優等生的な音だが、少し音量を上げると躍動感が出てきて音が弾むような元気さが出てくるのが特徴。キレが良くてフュージョンが楽しい。締まった低域が心地良い。

低域は締まりがあるだけでなく、かなり低いところまできちんと鳴る。パイプオルガンのC1(32Hz)も痩せずに再生できる。
中域~高域はクリアで明るい音。曲間や無音時のホワイトノイズはほぼゼロでS/N比が高い。

全体のバランスとして、低域から高域まできちんと分離して全ての帯域が明瞭に聴き分けできる、ハイエンドらしさを感じる音になっている。


【機能】
・ANC
 Mu3のアクティブノイズキャンセリングは弱いと言われるが、しっかりと効果は感じられる。
ただし圧倒的な静けさをもたらすものではなく、低周波ノイズを重点的に消すようにチューニングされているようだ。
屋内だと、エアコンや冷蔵庫のコンプレッサー音などがスーッと消える。
屋外では、バスや電車内のゴーッという音はかなり減って音楽に没入しやすくなる。
ただ中域・高域の環境音は多少残っている。

その代わり、音楽の音質に対してはANCをオンにしてもほとんど変化がなく、高音質のまま楽しめる。これはおそらく音質最重視で音楽成分が削られないようにチューニングをしたためと思われる。
この製品についてはANCは常時オンで大丈夫とおすすめできる。

外音取り込み(アンビエント)モードは微妙。環境音をよく拾ってくれるが、外部マイクの音質はそれほどでもないため、そちらが気になって音楽への意識が薄れてしまう。
これなら外音取り込み中は音楽再生を停止してしまってもいいのでは、とちょっと思った。

・接続性
 普通~やや良い。混雑する駅のホームなどを除けば音飛びをすることはない。
コーデックはSBCとAACのみ。

・操作性
 物理ボタンはMu3購入のきっかけになった仕様の1つだが、とても使い勝手がいい。
ボタン中央が凹になっているデザインで押しやすく、また押し込み量は浅くて押し感もソフトだがクリック感はきちんとある、という絶妙な加減になっている。
なので耳穴に押し込むような感覚は最小限で済む。誤操作の心配がないのでありがたい。

再生時の操作体系は、
 ・右側クリックで再生/停止
 ・右側ダブルクリックで曲送り
 ・右側長押しで音量アップ、左側長押しで音量ダウン
 ・左側クリックでANCオン/アンビエント/ANCオフの切り替え
曲戻しがないのは残念。

この製品の最大の弱みは、コントロールアプリがないこと。発売から半年たった2021年8月時点でもリリースされていない。
そのため、ボタン機能の割り当て変更、EQ、ANCの強度調整、ファームウェアアップデートなどのカスタマイズは一切できない。
それが致命的かというと、全体の完成度が非常に高いため、どうしてもカスタムしたいという気持ちはなく、実際にはあまり困っていない。
ただ「カスタマイズは何もできない」というのは割と大きな制約なので、今後アプリが出てくれたらいいなという思いはある。

・デザイン
 この製品の魅力の1つといってよいと思う。ケースは比較的小ぶりで、本体デザインと統一感のある曲面主体の形が美しい。
塗装表面のクリアコート層が厚いため高級感もあり、乱暴に扱わなければキズも付きにくい。
バッテリーは本体9時間、ケースで15時間の計24時間分で、大きさの割には容量があるので、バッテリーの心配はまったくしなくて済むのは良いところ。


【装着性】
 補足として、この製品の装着には少しコツが必要なので注意。
ノズルを耳に挿しただけだと隙間が開いてしまい、スカスカな音になってしまう。
そこから本体を回転させて耳介(耳甲介)にすっぽり収めると密着度が増し、本来の聴こえ方になる。
「耳に入れて少し回し、すっぽりはめる」を意識する必要がある。


【所感】
 といったところで、KEF Mu3は国内レビューが極端に少ない製品ですが良いTWSです。
上記のような弱点もありながら、音質面では絶大なアドバンテージがあります。(バーンインをしっかりした後に)
多機能よりも音質重視、デザイン的な満足感、物理ボタンの魅力。そんなところに惹かれる方にはお勧めの製品と思います。


【おまけ】 ※このキャンペーンは既に終了


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ANIMA ANW01の感想(おすすめ) [オーディオ]

Acoustuneのサブブランド、ANIMAから7月に発売された初めてのTWS「ANW01」をお迎えした。
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1ヶ月ほど聴いて音も落ち着いてきたようなので、簡単なレビューと感想を書き残しておこうと思う。
この製品、パッケージデザインやTAKU INOUE氏によるサウンドチューニング、ガイド音声の着せ替えなどのブランディングがしっかりしていて話題になったが、そのへんは私は詳しくないのでここではワイヤレスイヤホンとしての音質や機能を中心に書きます。

まず最初に強調しておきたいことが2つ。

1.使い始めの音は実力じゃない

ANW01は使い始めからしばらくは音の変化が大きい。
バーンインを始めて50時間くらいからが本領発揮。
最初に聴いて「こんなもんか」とやや期待外れと思っても、しばらくはそのまま使い続けてみると、ある時期からどんどん音が良くなってくるはず。


2.aptXは避ける

Bluetoothのコーデックは SBC/AAC/aptX に対応しているが、aptXで接続すると音が歪んで濁るので避けた方がいい。
これはANW01の問題ではなく、aptXの圧縮方法に問題がある模様。
普通のワイヤレスイヤホンでは感じにくいような歪みをANW01が再生できてしまうため、高音質の音源を聴くときに不自然さに気付いてしまう。
ちなみに自分の手持ち機材で3つのコーデック全てを試せるので、同じ音源で比較試聴してみたところでは、
音質は AAC ≧ SBC > aptX の順だった。
(AAC:iPhone12 Pro[Bluetooth5.0]
 SBC:Windows10[Bluetooth4.0]
 aptX:SP1000M[Bluetooth4.1])
スマートフォンなどで、aptXの有効・無効が切り替えられる環境の人は、aptXをオフにした方が音が良くなると思うのでそちらをお勧めします。



【音質】
 以下、コーデックはAAC、イヤーチップは付属品、イコライザーは「MIDNIGHT」での感想。

ANW01の音質を一言でいえば「弱点の少ない、万人受けの高音質」。
低域は膨らまずに深く沈み込み、例えばDAFT PUNK『Doin' It Right』の30Hz前後の超低音でも切れ味良くきちんと再生する。
また低域が中域を圧迫することはなく、ボーカルやギターの主旋律は明瞭に聴こえる。
高域もクリアで、歯擦音や金属音が刺さるような目立ったピークも感じられない。
S/N比もまずまずの高さ。

モニターというほどフラットな特性ではない気がするが、チューニングが絶妙なのか、全体に優等生的なバランスの良いサウンドにまとまっている。
またトランジェント特性が良く、短いクリック音などが含まれる音楽はキレよく再生されるところも気持ちが良い。

イコライザーは巷の評判通り、「MIDNIGHT」が万能型で優れている。低域・中域・高域それぞれの気持ち良いポイントを聴かせてくれるバランスがよい。
「NIGHT」は楽器がよく使う低域と高域が僅かに押し出された、いわゆる弱ドンシャリサウンド。
「DAY」は低域と高域を丸く優しくしたという説明だが、レベル調整としては中域をやや上げたような印象(実質的に同じだが)。

いずれの設定も、極端に振っているわけではないため、日常的にどれを使っても不自然に感じることはないと思う。

また、曲間や再生していないときのホワイトノイズやポップノイズは皆無。他製品ではときどきこうしたノイズに出会うことがあるので、このあたりがきちんとしているところは安心感がある。


【機能】
・接続性
 Bluetoothの接続安定性は普通~やや良。相手プレーヤーとの相性もあると思うが、屋内では意外に遠くまで届き、音飛びはほとんどない。
屋外では、人が多いところや駅のホームなどでは普通に音飛びする場合あり。こればかりは2.4GHz帯が干渉しまくる現在の環境では仕方ない。(しかしそのせいでワイヤレスイヤホンは屋外ではどうしてもオーディオ機器というより便利グッズという扱いになってしまう)

・操作性
 タッチセンサではなく物理ボタンなので、うっかり触れて再生停止してしまうようなことが起きないのはありがたい。
やや押し感が強めなので、操作するときに耳に押し付ける感じになる。ここは気になる人は気になるかもしれない。私は誤操作で音楽が途切れるストレスの方がはるかに大きいので、あまり気にならない。
イヤホン本体ボタンで操作できるのは、クリック1~4回でそれぞれ「再生/停止」「曲送り」「曲戻し」「外音取り込みオン/オフ」のみ。
他に、本体側で「音量上げる/下げる」「イコライザー切替」の操作ができると便利だと思うので、ここはファームウェアの更新でいつか対応してくれると嬉しいと思う。

・充電ケース
 この製品の充電ケースの小ささは特筆ものだと思う。手の平で握るとすっぽり隠れてしまうほど小さく、携帯性は抜群。
おかげでバッテリー容量が控えめで本体と合わせてトータル15時間となっているが、充電もしやすいので困るということはない。
むしろデメリットは、イヤーピースの大きさに制約が出ることか。ネットの情報では、人気のAZLA SednaEarfit Crystal for TWS は Lサイズ MSサイズ まで入るとのことなので大丈夫そうだが、その他のイヤーピースを検討するときは気をつけようと思う。


【所感、Mu3との比較など】
 ANW01の評判はうなぎ上りのようだが、アニメ好き・サブカル好きをターゲットとした話題作りとは別に、オーディオ的にもきちんとした製品に仕上がっていると感じる。
普段はTZ700など有線の高音質イヤホンに慣れている自分でも違和感がなく、ワイヤレスの便利さを享受している。
KEF Mu3 に続き、無試聴でのTWS購入だったが、2つ続けての「当たり」でとても満足。

Mu3は高級機だけあってANW01よりさらに音にキレがあり、S/N比も高く、オーディオ的には一枚上手ではあるものの、ANW01の音質も決して見劣りするほど大きな差ではない。

機能的にはMu3はANCあり、ANW01はANC無しだが密閉性が高いのでノイキャンの必要性はそれほど感じない。むしろMu3にはイコライジングできるアプリがなかったりファームウェアアップデートができなかったりといった欠点もあり、使いやすさでいえばANW01の方が一枚上手だったりする。

音質だけならMu3だけれど、価格差や使い勝手のトータルバランスで考えると、ANW01はより幅広くおすすめできる良い製品と思います。

以上



KEF Mu3 のレビューはこちら


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2021.08.22 11:25更新:
 SednaEarfit Crystal for TWS は Lサイズまで大丈夫! との情報をいただき訂正しました。
 アユートの営業S様、ありがとうございました。


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KEF Mu3の感想 [オーディオ]

KEF初のANC付ワイヤレスイヤホン、Mu3を発売初日に購入しました。
KEF_Mu3.jpg
どうも国内初出荷のロットで届いたらしく、ネットにも今日から着弾報告やレビューが載り始めている模様。
自分はワイヤレスイヤホン自体が初めてで(よく無試聴で買ったもんだ)、あまり有意義なレビューは書けませんが、とりあえずTwitterに上げたファーストインプレッションのまとめ。



レビューの続きはこちら


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さよならPonoPlayer [オーディオ]

そういえば2014年にニール・ヤングが鳴り物入りで立ち上げたけどその後ほったらかしにされてしまった気の毒な「PonoPlayer」。
クラウドファンディングでいち早く入手してまあ文句言いながらも気に入っていたのですが、その後どうなったかというと。

昨年末、しばらく(3ヶ月くらい)しまっておいたのを出してみたら、いつの間にかウレタン塗装が加水分解を起こしてベタベタになり、ちょっと復旧不能な残念な状態になってしまったため、泣く泣くお別れとなりました。

ちょうど6年。
使わないときは乾燥剤漬けにしておくべきだったとか、ド派手な黄色バージョン(ウレタン塗装がない)にしておけばよかったとか後悔したけど仕方ない。
ほんとに音質以外は最低レベルだったけど、いいやつだったぜPono。
ありがとう。バイバイ。



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HiBy R3Pro レビュー お手頃便利な軽量DAP [オーディオ]

1月下旬にポチっとしたのに、新型コロナウィルスの影響で4月中旬まで待ちました。
HiBy R3Proのレビューはまだ多くないようなので、人柱的にいろいろ記録しておきます。

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<R3Proまとめ>

【こんな用途に良さそう】
 ・ポータブルオーディオ入門機として
 ・メインシステムが重装備になりすぎた猛者のお手軽なサブ機として


【ここがGood!】
 ・小さくて軽いのに、かなり多機能で電池の保ちも良い
  BluetoothはaptXやAAC対応。バランス端子(2.5mm)もあり。
  USB-DAC、DLNA(プレーヤー)などの拡張性やスマホでの操作など多機能。
 ・音質も値段の割になかなか良い
  CS43431のデュアルDAC、デュアルクロックなどハード面のこだわりと、
  その気になれば細かく音質を調整できるソフト機能
 ・HiBy OSの直感的な操作性がわかりやすく、動作も安定


【ここは注意】
 ・邦楽をたくさん持っている人は注意
  漢字の曲名やアーティスト名が中国語式のソート順になり非常に探しにくいです。
  ファームウェアはV1.3ですが今後のアップデートでソート順の改善に期待したいところ。
 ・細かい設定をするには、メニューの日本語表示がわかりにくい



<詳細> ※ファームウェアはV1.3での評価です

◆本体
ACTIVO CT10よりさらに一回り小さく、AK100とほぼ同じ大きさ。あるいはmojoを薄くした感じです。
重さは95gで非常に軽いもののアルミ筐体なので剛性は確保されています。
表面に保護ガラスシート、裏面に保護フィルムが貼られており、さらにそれぞれ予備が1枚ずつ同梱されているのは、この価格帯の製品では驚き。
おまけ的なものですが本体プラスチックケースも付属しています。
付属のUSB Type-Cケーブルは布巻線で、コネクタも少しきつめでしっかりした印象です。


◆操作性
HiBy OSは直感的に操作できるインタフェースで扱いやすく、中華DAPにしては(失礼)動作が安定しています。
メニューの日本語訳は概ね通じますが、細かいシステム設定では「待機で電源をオフ」「スリープ時間」「待機する」と3つ似たメニューがあったり「記録ステップ」とかの項目はいまいちよくわかりません。
2020-04-28 11.36.05.jpg

操作性はなかなか良い一方、非常に厄介なのが曲名やアーティスト名のソート順。
「拼音(ピンイン)」という中国式の発音記号がアルファベットと一緒にソートされるため、
アルファベットと漢字の混在 → 数字 → ひらがな → カタカナ
という順に並びます。

例えば、
 George Benson
 Grover Washington, Jr.
 高野寛
 古内東子
 谷山浩子
 鬼塚ちひろ
 Harvey Mason
 荒井由実
 Ivan Lins
 Jason Mraz
 :
 :
みたいな感じ。
日本語、というか漢字のアーティスト名や曲名をたくさん持っていると探すのが非常につらいです。
検索機能もありますが、半角英数しか入力できない。(スマホアプリの方は日本語検索も可能)

今のところこの部分がR3Proの最大の弱点でしょう。
ファームのアップデートで、アルファベットと漢字を分けてソートするオプションがぜひ欲しいと思います。

また、microSDカードの全曲を一覧表示させようとすると、6000~7000曲くらいのところで打ち止めになってしまいます。これもちょっと残念。


◆機能
[USB-DAC]
システム設定の「USBモード」で「オーディオ」を選びます。
32bit、384kHzまで対応。
ただ、USB-DACモードに入ると直前の再生状態を忘れてしまうようで、そこはちょっと残念。

[DLNA]
レンダラー(プレーヤー)機能のみ対応。サーバ機能やコントローラー機能は未対応。
メニューから「WiFi環境で音楽をインポート」を選択するとすぐに再生データ待ちになります。
スマホやPCでコントローラを起動して、レンダラーにR3Proを指定すれば再生できます。
DLNAモードも、一度入ると再生レジューム機能は働かず、抜けた後はまた曲を選び直しです。

[スマホからの操作]
「HiBy Link」をONにすると、スマホの専用アプリを使って操作できるようになります。
R3Pro本体と似た操作系で直感的に操作できますが、iPhone用のアプリはちょっと難あり。
WiFi接続とBluetooth接続が選べるが、Bluetooth接続のときはアルバムアートが表示されない。
WiFi接続では日によって頻繁にエラーメッセージが出たり突然落ちたり。
これはバージョンアップで改善してほしいところ。


◆音質
音質評価にはEAH-TZ700、純正ケーブルを2.5mmバランス接続で聴いています。

一聴して、素直な美音系の音作りと感じます。
S/N比は十分に高く、出音は滑らか。
CS43431のデュアルDAC、44.1系と48系のデュアルクロック搭載など、ハード面のこだわりが基本的な音質の良さを担保しています。

ただ低価格プレーヤーの宿命で「完璧な静寂感」とか「強烈なアタック感」等の再現は高級機には及ばず、全体的に万人受けのする無難な音質にまとめている感じがします。

しかしHiBy製品の特徴として、通常のイコライザーだけでなくソフト的に音質関連のパラメータを調整する「MSEB」という機能があります。COWONのPLENUEシリーズが搭載する「JetEffect」と似たもので、音場やサウンドエフェクトをかなりの振れ幅で調節できるので、ここである程度自分の好みの音に寄せることができます。
2020-04-28 11.35.37.jpg

さらに「再生設定 → アンチエイリアスフィルタ」というメニューから、DACの機能と思われる、オーバーサンプリング時のデジタルフィルター4種類の中から選べます。
微妙な違いですが、これが案外、長時間聴いていると音質の印象に影響していることがわかります。
2020-04-28 11.38.39.jpg

音質については、さすがに最高レベルとまではいきませんが、基本的な部品の良さ、多彩な調整機能のおかげでそこそこ満足いくレベルに持っていくことができます。


◆おわりに
長々と書いてきましたが、この音質、大きさ、機能でこの価格なら、ポータブルオーディオ初心者や、ベテランのサブ機として気軽に使うにはなかなか良い機種ではないかと思います。

あとは操作性のところで書いたように、漢字を含むソートについてはファームウェアのアップデートでぜひ対応してほしいところです。今後に期待したいと思います。


以上


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Technics EAH-TZ700、理詰めで生まれた至高の音 [オーディオ]

2019-12-31.jpg

理想のスピーカーはどんなものかといえば、好みは人それぞれという話とは別の次元で、エンジニアリング的な理想のスピーカーというものが明確に存在する。
それは高忠実再生、つまり入力された信号を瞬時に、同じ波形の音に完璧に変換するものだ。
瞬時に再現するから音の立ち上がりが早く、消えるときもスムーズ。余計な振動による付帯音もない。
オーディオ用語では「トランジェント(過渡特性)が良い」と言ったりする。
トランジェントが良いというのは、音の分離の明確さや定位の良さにもつながる、重要な要素だ。

ではそんな理想のスピーカーにはどんなドライブユニットが必要か。
それは信号を素早く空気の振動に置き換えるために
 ・できるだけ剛性の高い振動板を
 ・できるだけレスポンス早く、まっすぐにスムーズに振動させる
ことが重要で、さらに
 ・帯域で複数ユニットに分割させない(フルレンジ)
 ・可聴域に固有振動数を持ってこない
も忠実再生には大事な特徴になる。

そうすると必要な要素は以下のようなものになる。
 ・なるべく硬くて軽い振動板
 ・素早く大きく振動板を動かす強い駆動力
 ・振動板を精度よく平行に動かし、速やかに制動する機構
 ・大振幅のときの空気のダンパ効果を弱める気流コントロール
 ・固有振動数の調節

はい、これらをスピーカーではなくイヤホンのドライバーユニットとして真面目に追求した製品が「EAH-TZ700」といえます。
「なぜTZ700は音がいいのか?」という疑問には、オーディオの一般論で説明できてしまうのだ。
この製品の技術的な説明は検索すればいくらでも出てくるのでここでは詳細に引用しないが、イーイヤのサイトに掲載された開発者インタビューやPHILE WEBの記事がわかりやすいと思う。

 新生Technics 初のハイエンドイヤホン EAH-TZ700 開発者インタビュー!(e☆イヤホン)

 テクニクス最上位イヤホン「EAH-TZ700」は “現代の名機” だ! 50数年の技術が小型筐体に凝縮(PHILE WEB)


さて、前振りはここまでにして、10日間ほど聴き込んだ時点のTZ700のレビューというか感想を。

「いちばん好みの音」を出すイヤホンは私にとってANDROMEDAだったが、
「いちばん理想的な音」を出すイヤホンはEAH-TZ700だと思った。
フルレンジのドライバ1基という構成らしい、ワイドレンジで音の繋がりが良く、位相差のない音。
同様の思想はSHUREのKSE1500にもあったが、あちらはコンデンサー式の振動膜で繊細な表現が得意だったのに対し、Technicsのこちらはボイスコイル式の大ストロークでドムドム押し出す音が出せるのが大きな違いだろう。音域の全てにおいて力強いのが特徴だ。
特に締まりのある低音の質の高さは、ある意味スピーカーよりも理想に近いと思える。

初めは分離感は普通の高級イヤホン(←普通の高級イヤホンって何だ?)並みだと思っていたけど、いやいや実はこれめちゃめちゃ解像度高い。
音の粒立ちとか特に強調もされず自然に鳴っていたのですっかり騙された。
打ち込みマシマシなアニソンを聴いたら、全部分離されて音の洪水みたいに迫ってくるので焦った。ちょっと聴き疲れしちゃいそう。
逆に打ち込みが多すぎないデジタル曲(CorneliusやDaft Punk)は、アーティストの意図が忠実に再現されている感じがして爽快だった。

基本的に音源を選ぶイヤホンではないものの、アコースティックな演奏を録音してデジタルマスタリングした音源もとても良い。
私の好きなFOURPLAYの、ハーヴィー・メイソンのバスドラムの鋭いアタックとネーザン・イーストの唸るベースラインがこれほどブルーノート東京で聴くライブに近い音で再生できるイヤホンがあるとは思っていなかった。
録音されてない音が出るはずないので「どこにこんな音が入ってたんだよぉ...」と驚きつつ片っ端から聴き直ししている。

DAPは癖のないものを使うのがいいと思う。
私のは現在、AK120を某所に頼んでバランス追加の魔改造を施したものなので少しズルだけど、全体にニュートラルなDAPで十分な低音が出ているので、低音を増すような傾向のプレイヤーを使うと大変なことになりそう。
低音過大だというレビューも見かけるけど、DAPには注意が必要と思う。

あ、あと、高域が刺さるという感想も見かけたが、私はもうモスキート音が聴き取れないのでわかりません。高音に敏感な人は試聴してお確かめくださいな。

イヤーピースは付属のものを使っているが、4種類のサイズは気持ち小さめに寄せているので、耳穴の小さい人に優しいセットになっている。
私は最大のものでちょうど良かったが、いずれもっとフィットするものを探してみようかなと思う。
またケーブルも付属のものしか試していないが、タッチノイズが少しあるので、今は耳掛け式にして回避している。

今のところ、店頭販売のみ・値引きなしという売り方なので入手しにくいが、近くで試聴できる環境がある方はいちど試してみるといいと思う。
最後に好みに合うかどうかは人それぞれだが、音質が良いことだけは誰にでもわかる、稀有な製品であることは間違いない。
私は試聴した日は我慢してそのまま帰りましたが、1週間しか耐えられなかった....
(後悔はしていない、むしろ幸せ)

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2020.01.16 PHILE WEBの記事へのリンクを追加しました


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