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KEF Mu3のレビュー(続き) [オーディオ]

ANW01の感想で KEF Mu3 との比較を書いた割には、Mu3はファーストインプレッションしか書いてなかったことに気付いた。

なのでMu3のその後について。

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Mu3、国内ではほぼKEF公式の通販以外に販路がなく、試聴機も直営店にしかない模様。
未だに本気で売る気があるのかどうか判然としないが、製品としてどうかというと、特に音質において名機の1つであることは間違いない。


【音質】
 まずバーンインについて。初期の音出しでは「そつなくまとめた綺麗なサウンドだな」程度に思っていたのが、20時間くらいからどんどん音が良くなってきて、50時間くらい経ったところでは驚くほどの音質に化けた。

切れ味の鋭い高速・高分解能な音が出るようになり、キックドラムなどパンチのある低音も有線イヤホンのように余裕で再生。トランジェント特性の高さを強く感じさせる。

また、音量を絞っているときは全体に優等生的な音だが、少し音量を上げると躍動感が出てきて音が弾むような元気さが出てくるのが特徴。キレが良くてフュージョンが楽しい。締まった低域が心地良い。

低域は締まりがあるだけでなく、かなり低いところまできちんと鳴る。パイプオルガンのC1(32Hz)も痩せずに再生できる。
中域~高域はクリアで明るい音。曲間や無音時のホワイトノイズはほぼゼロでS/N比が高い。

全体のバランスとして、低域から高域まできちんと分離して全ての帯域が明瞭に聴き分けできる、ハイエンドらしさを感じる音になっている。


【機能】
・ANC
 Mu3のアクティブノイズキャンセリングは弱いと言われるが、しっかりと効果は感じられる。
ただし圧倒的な静けさをもたらすものではなく、低周波ノイズを重点的に消すようにチューニングされているようだ。
屋内だと、エアコンや冷蔵庫のコンプレッサー音などがスーッと消える。
屋外では、バスや電車内のゴーッという音はかなり減って音楽に没入しやすくなる。
ただ中域・高域の環境音は多少残っている。

その代わり、音楽の音質に対してはANCをオンにしてもほとんど変化がなく、高音質のまま楽しめる。これはおそらく音質最重視で音楽成分が削られないようにチューニングをしたためと思われる。
この製品についてはANCは常時オンで大丈夫とおすすめできる。

外音取り込み(アンビエント)モードは微妙。環境音をよく拾ってくれるが、外部マイクの音質はそれほどでもないため、そちらが気になって音楽への意識が薄れてしまう。
これなら外音取り込み中は音楽再生を停止してしまってもいいのでは、とちょっと思った。

・接続性
 普通~やや良い。混雑する駅のホームなどを除けば音飛びをすることはない。
コーデックはSBCとAACのみ。

・操作性
 物理ボタンはMu3購入のきっかけになった仕様の1つだが、とても使い勝手がいい。
ボタン中央が凹になっているデザインで押しやすく、また押し込み量は浅くて押し感もソフトだがクリック感はきちんとある、という絶妙な加減になっている。
なので耳穴に押し込むような感覚は最小限で済む。誤操作の心配がないのでありがたい。

再生時の操作体系は、
 ・右側クリックで再生/停止
 ・右側ダブルクリックで曲送り
 ・右側長押しで音量アップ、左側長押しで音量ダウン
 ・左側クリックでANCオン/アンビエント/ANCオフの切り替え
曲戻しがないのは残念。

この製品の最大の弱みは、コントロールアプリがないこと。発売から半年たった2021年8月時点でもリリースされていない。
そのため、ボタン機能の割り当て変更、EQ、ANCの強度調整、ファームウェアアップデートなどのカスタマイズは一切できない。
それが致命的かというと、全体の完成度が非常に高いため、どうしてもカスタムしたいという気持ちはなく、実際にはあまり困っていない。
ただ「カスタマイズは何もできない」というのは割と大きな制約なので、今後アプリが出てくれたらいいなという思いはある。

・デザイン
 この製品の魅力の1つといってよいと思う。ケースは比較的小ぶりで、本体デザインと統一感のある曲面主体の形が美しい。
塗装表面のクリアコート層が厚いため高級感もあり、乱暴に扱わなければキズも付きにくい。
バッテリーは本体9時間、ケースで15時間の計24時間分で、大きさの割には容量があるので、バッテリーの心配はまったくしなくて済むのは良いところ。


【装着性】
 補足として、この製品の装着には少しコツが必要なので注意。
ノズルを耳に挿しただけだと隙間が開いてしまい、スカスカな音になってしまう。
そこから本体を回転させて耳介(耳甲介)にすっぽり収めると密着度が増し、本来の聴こえ方になる。
「耳に入れて少し回し、すっぽりはめる」を意識する必要がある。


【所感】
 といったところで、KEF Mu3は国内レビューが極端に少ない製品ですが良いTWSです。
上記のような弱点もありながら、音質面では絶大なアドバンテージがあります。(バーンインをしっかりした後に)
多機能よりも音質重視、デザイン的な満足感、物理ボタンの魅力。そんなところに惹かれる方にはお勧めの製品と思います。


【おまけ】 ※このキャンペーンは既に終了


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ANIMA ANW01の感想(おすすめ) [オーディオ]

Acoustuneのサブブランド、ANIMAから7月に発売された初めてのTWS「ANW01」をお迎えした。
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1ヶ月ほど聴いて音も落ち着いてきたようなので、簡単なレビューと感想を書き残しておこうと思う。
この製品、パッケージデザインやTAKU INOUE氏によるサウンドチューニング、ガイド音声の着せ替えなどのブランディングがしっかりしていて話題になったが、そのへんは私は詳しくないのでここではワイヤレスイヤホンとしての音質や機能を中心に書きます。

まず最初に強調しておきたいことが2つ。

1.使い始めの音は実力じゃない

ANW01は使い始めからしばらくは音の変化が大きい。
バーンインを始めて50時間くらいからが本領発揮。
最初に聴いて「こんなもんか」とやや期待外れと思っても、しばらくはそのまま使い続けてみると、ある時期からどんどん音が良くなってくるはず。


2.aptXは避ける

Bluetoothのコーデックは SBC/AAC/aptX に対応しているが、aptXで接続すると音が歪んで濁るので避けた方がいい。
これはANW01の問題ではなく、aptXの圧縮方法に問題がある模様。
普通のワイヤレスイヤホンでは感じにくいような歪みをANW01が再生できてしまうため、高音質の音源を聴くときに不自然さに気付いてしまう。
ちなみに自分の手持ち機材で3つのコーデック全てを試せるので、同じ音源で比較試聴してみたところでは、
音質は AAC ≧ SBC > aptX の順だった。
(AAC:iPhone12 Pro[Bluetooth5.0]
 SBC:Windows10[Bluetooth4.0]
 aptX:SP1000M[Bluetooth4.1])
スマートフォンなどで、aptXの有効・無効が切り替えられる環境の人は、aptXをオフにした方が音が良くなると思うのでそちらをお勧めします。



【音質】
 以下、コーデックはAAC、イヤーチップは付属品、イコライザーは「MIDNIGHT」での感想。

ANW01の音質を一言でいえば「弱点の少ない、万人受けの高音質」。
低域は膨らまずに深く沈み込み、例えばDAFT PUNK『Doin' It Right』の30Hz前後の超低音でも切れ味良くきちんと再生する。
また低域が中域を圧迫することはなく、ボーカルやギターの主旋律は明瞭に聴こえる。
高域もクリアで、歯擦音や金属音が刺さるような目立ったピークも感じられない。
S/N比もまずまずの高さ。

モニターというほどフラットな特性ではない気がするが、チューニングが絶妙なのか、全体に優等生的なバランスの良いサウンドにまとまっている。
またトランジェント特性が良く、短いクリック音などが含まれる音楽はキレよく再生されるところも気持ちが良い。

イコライザーは巷の評判通り、「MIDNIGHT」が万能型で優れている。低域・中域・高域それぞれの気持ち良いポイントを聴かせてくれるバランスがよい。
「NIGHT」は楽器がよく使う低域と高域が僅かに押し出された、いわゆる弱ドンシャリサウンド。
「DAY」は低域と高域を丸く優しくしたという説明だが、レベル調整としては中域をやや上げたような印象(実質的に同じだが)。

いずれの設定も、極端に振っているわけではないため、日常的にどれを使っても不自然に感じることはないと思う。

また、曲間や再生していないときのホワイトノイズやポップノイズは皆無。他製品ではときどきこうしたノイズに出会うことがあるので、このあたりがきちんとしているところは安心感がある。


【機能】
・接続性
 Bluetoothの接続安定性は普通~やや良。相手プレーヤーとの相性もあると思うが、屋内では意外に遠くまで届き、音飛びはほとんどない。
屋外では、人が多いところや駅のホームなどでは普通に音飛びする場合あり。こればかりは2.4GHz帯が干渉しまくる現在の環境では仕方ない。(しかしそのせいでワイヤレスイヤホンは屋外ではどうしてもオーディオ機器というより便利グッズという扱いになってしまう)

・操作性
 タッチセンサではなく物理ボタンなので、うっかり触れて再生停止してしまうようなことが起きないのはありがたい。
やや押し感が強めなので、操作するときに耳に押し付ける感じになる。ここは気になる人は気になるかもしれない。私は誤操作で音楽が途切れるストレスの方がはるかに大きいので、あまり気にならない。
イヤホン本体ボタンで操作できるのは、クリック1~4回でそれぞれ「再生/停止」「曲送り」「曲戻し」「外音取り込みオン/オフ」のみ。
他に、本体側で「音量上げる/下げる」「イコライザー切替」の操作ができると便利だと思うので、ここはファームウェアの更新でいつか対応してくれると嬉しいと思う。

・充電ケース
 この製品の充電ケースの小ささは特筆ものだと思う。手の平で握るとすっぽり隠れてしまうほど小さく、携帯性は抜群。
おかげでバッテリー容量が控えめで本体と合わせてトータル15時間となっているが、充電もしやすいので困るということはない。
むしろデメリットは、イヤーピースの大きさに制約が出ることか。ネットの情報では、人気のAZLA SednaEarfit Crystal for TWS は Lサイズ MSサイズ まで入るとのことなので大丈夫そうだが、その他のイヤーピースを検討するときは気をつけようと思う。


【所感、Mu3との比較など】
 ANW01の評判はうなぎ上りのようだが、アニメ好き・サブカル好きをターゲットとした話題作りとは別に、オーディオ的にもきちんとした製品に仕上がっていると感じる。
普段はTZ700など有線の高音質イヤホンに慣れている自分でも違和感がなく、ワイヤレスの便利さを享受している。
KEF Mu3 に続き、無試聴でのTWS購入だったが、2つ続けての「当たり」でとても満足。

Mu3は高級機だけあってANW01よりさらに音にキレがあり、S/N比も高く、オーディオ的には一枚上手ではあるものの、ANW01の音質も決して見劣りするほど大きな差ではない。

機能的にはMu3はANCあり、ANW01はANC無しだが密閉性が高いのでノイキャンの必要性はそれほど感じない。むしろMu3にはイコライジングできるアプリがなかったりファームウェアアップデートができなかったりといった欠点もあり、使いやすさでいえばANW01の方が一枚上手だったりする。

音質だけならMu3だけれど、価格差や使い勝手のトータルバランスで考えると、ANW01はより幅広くおすすめできる良い製品と思います。

以上



KEF Mu3 のレビューはこちら


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2021.08.22 11:25更新:
 SednaEarfit Crystal for TWS は Lサイズまで大丈夫! との情報をいただき訂正しました。
 アユートの営業S様、ありがとうございました。


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