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ハイレゾWalkmanは音楽配信ビジネスを変えるか? [音楽]

IFA2013で、ソニーからついにハイレゾ対応のWalkman、F880シリーズが発表された。

FLACやALACを含む192kHz24bitに対応、物理キー搭載、ノイキャン、長い再生時間と機能は十分で、音質面でもソニーなら期待を裏切ることはないだろう。
ネットやTwitterを見てもオーディオファンの評価はほぼ好意的で、容量が最大で64GBというのが気になるという声はあるものの、おそらく人気製品になるに違いない。
まずは開発関係者の方々に敬意を表したい。

この製品の魅力はいくらでも他のサイトで語られるだろうから、ここではこの新製品がもたらすであろう未来について考えてみたい。

F880シリーズは、メジャーなブランドから普及価格帯で登場する初めてのハイレゾDAPという意味だけにとどまらない。
この製品は、初めて、オーディオマニアでない「普通の人たち」に、高音質な音楽を広める起爆剤になる。
事実、ソニーもIFAで発表した製品の多くに「ハイレゾ」というキャッチフレーズを入れてハイレゾ推しを鮮明に打ち出した。F880の位置づけはとても明確だ。

そしてこの製品の発売により、ソニー・ミュージックエンタテインメントは高音質音楽の販売が解禁となる。
おそらくmoraでは高音質音源がダウンロードできるようになるだろう。最初にハイレゾ無料サンプルのキャンペーンなどもあるはずだ。
1年もたてば、メジャーなアーティストのハイレゾ音源が普通に販売されるようになっているかもしれない。
そしてオーディオコーナーでは、高級イヤホン・ヘッドホンが飛ぶように売れているかもしれない。
売れ筋DAPがハイレゾに対応することが明らかになって、そういう世界が現実になる可能性が一気に高まったように感じた。

未知数なのがAppleの動き。
iPodやiPhoneはハイレゾ対応するのか。
音質技術でソニーと正面から対決するのは得策ではない。
ソニーはiTunesでハイレゾ音源を売りたいが、iPodが対応しなければ望むべくもない。
しかもAppleはALACで囲い込みをしたいだろうから、FLACに対応するとは考えにくい。
もし市場がiTunesにもハイレゾを望むようになったら、Appleはけっこうなジレンマに陥ったりするかもしれない。
まあ早ければ9月中にもAppleの動向はわかるかもしれませんが。


ということで最後に。
これからハイレゾ音源の普及が本格化してくると、音楽配信ビジネスも活況になる可能性は高い。
音楽好きな者として、アーティストや音楽界に携わる人たちへの適正な配分のしくみが早期に再構築されることを祈らずにはいられない。

こんな音楽ダウンロード販売があったら [音楽]

こんな動線で音楽のダウンロード販売ができないだろうか。

1.動画投稿サイト
YouTubeでもニコニコ動画でもいい。
まずは商業音楽の不正アップロード・ダウンロードを防ぐため、通常動画の音質を下げてしまおう。
いちばん手っ取り早いのは、モノラル音声にしてしまうことかもしれない。

そして、タグに「音楽」と付けられた動画だけは、高音質で投稿できるようにする。
ただし、1分30秒から2分くらいで強制的に切ってしまう。
ユーザーは、楽曲全体を聞きたい場合は低音質の通常動画を、きちんと試聴したい場合は高音質の「音楽」動画を聴くことになる。

そしてここがポイントだが、「音楽」の動画には、すぐ下に音楽配信サイトへのリンクボタンが表示される。
iTunesやe-onkyoやHDTracksなど複数あってもよい。

2.音楽配信サイト
ユーザーが音楽配信サイトのリンクをクリックすると、その動画で使われている音楽の購入ページが開く。
あらかじめユーザー登録してあれば、圧縮音源(MP3)、CD音質、スタジオ音質など、欲しい音質/ファイル形式を選んで数クリックで購入できる。

3.ダウンロード
購入した音楽は、PCやスマホに即ダウンロードもできるし、ストリーミング配信を受けることもできる。
もちろんDRMフリーで。


キーとなるのは動画投稿サイトから音楽配信サイトの楽曲販売ページへのリンクを自動的に付ける技術だが、すでに「Shazam」「Soundhound」というアプリが実用化されているので、動画の音声データとタイトル情報から検索することは可能だろうと思う。

シーズは揃っている。あとは皆が喜ぶ課金体系とシステムが構築できれば。

ぜひ。

音楽のダウンロード販売の適正価格を考える。 [音楽]

ウォークマンの発表に気を取られてすっかり見落としていたが、10月1日からmoraがDRMを廃止して、ファイル形式もATRACからAAC 320kbpsに変更、という発表もあったんですね。
http://labelgate.com/press/pdf/LAG_PR_120920_FINAL.pdf

ようやく重い腰を上げてDRM廃止に踏み切ってくれたことは素直に評価したい。
ATRACからの路線変更も、残念だろうが現状では当然必要なことだし、むしろ遅すぎたくらいに思う。

以前も少し書いたことがあるが、今回は音楽のダウンロード販売における価格についてだらだらと長文メモ。

結論から先に書くと、今ダウンロードで音楽を買うのであれば
 ・1曲
   不可逆圧縮(AAC/MP3/WMA等):100~150円
   CD音質(FLAC/ALAC/WAV等):150~200円
   スタジオ音質(FLAC/ALAC/WAV/DSD等):200~300円
 ・アルバム
   不可逆圧縮:1000円
   CD音質:1500円
   スタジオ音質:2000~2500円

くらいが、「いい塩梅の」価格だと勝手に思っている。

適正価格といっても、買う側/ユーザーにとっては価格は安いほどいいだろうし、売る側にすれば費用と利益計算から価格の最低ラインは自ずと決まってくるものだ、という主張はあると思う。
ただ、現在のもろもろの価格水準から見て、上記くらいがユーザーが音楽に対して期待する値段じゃないだろうか。
音楽業界も従来とは逆の発想で、これくらいをターゲット価格として採算が取れるよう、利益配分のしくみを根本から設計し直してほしいと思う。

音楽における流通の変化は、新聞のそれと似ている。
 ・価値の本質がコンテンツそのものにあって、それを運ぶ物理メディア(CD/紙)は手段にすぎず重要ではないこと。(これがレコードとか本とかになってくると、物理的な質感も微妙に価値に影響する気がするけど…)
 ・従来、物理メディアの製造や流通のためのシステムが別に確立しており、そのためのコストも発生していたこと。
 ・そして商品の価格にはそうした製造や物流にかかるコストも反映されるのに対し、ユーザーが財布のひもを解いて対価を払うのはあくまでコンテンツであって、容れ物や物流に金を払っている意識はないというギャップが存在していたこと。

これがコンテンツのネット配信の普及に伴い、物理メディアがどんどん減少し、従来の製造や流通のシステムが大きな転換点に立たされているのが現在の状況だろう。
新聞販売店やレコード量販店の苦労は本当に大変なものだろうと思う。

しかし音楽の場合、特に問題なのは、コンテンツの作り手であるアーティストの手元に十分なお金がいかないこと。
CDの場合の利益配分(ウタレンのサイトに詳しい例があります)と同じような比率でダウンロード販売も配分されてはアーティストもたまらないだろうし、かといってダウンロードの曲単価を高くしたら、やはり売れなくなってしまう。
音楽業界は、流通システムの革命を早急に進め、アーティストと共生できる新たな音楽販売のしくみを確立しないと、共倒れしてしまうのではないかと本当に心配している。

1つ大きな抜け穴になるのがCDレンタルだ。
シングルが100円前後はまだしも、アルバムが300円から400円というレンタル料金は、いくらダウンロード配信でがんばっても容易には近づけない価格だろう。
私的複製の範囲であればレンタルCDから合法的にリッピングができる現在、あまりにもレンタルと購入の価格差が大きいと、ダウンロード販売の普及を妨げる要因にもなる。
利益配分の構造を抜本的に見直すならば、レンタルとダウンロード購入の価格バランスが取れるような著作権料の設定が必要ではないかと思う。

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長くなってしまったがあと1つ、違法コピーについて。
音楽のダウンロード販売を成功に導くには、(ユーザーが手軽に購入できるしくみの提供を前提に)単価を下げてどんどん買ってもらうしかないと思う。
ユーザーに少しでも不利益があれば売れなくなるのはCCCDの失敗でも明らかなので、DRMは諦めた方がよい。
その代わり違法コピー、違法配信はやったもの勝ちにせず徹底的に告発していくことで「不正は高くつく」という社会心理を作っていくしかないだろう。


なんだかんだ文句を書いてしまったが、音楽業界が強い危機感を持って新しいしくみを模索していることは感じているので、一致協力して早急に改革を進めてくれたら本当にうれしいし、もっと手軽に安く音楽を買えるようになったら今以上にじゃんじゃん音楽を楽しみたいと思う。

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(2012/10/14 本文修正)
当初の記述に勘違いがありました。レンタルしたCDのリッピングは、私的利用目的であれば合法という解釈になるようです。
したがって、「CDから簡単にリッピングができてしまう現在、あまりにもレンタルと購入の価格差が大きいと、ユーザーがつい出来心で犯罪者になってしまう……」のくだりは誤りでした。申し訳ありません。
本文中の該当箇所は削除し、著作権料にフォーカスした記載に改めました。

修正ついでに「ミュージシャン」→「アーティスト」に統一。

リー・リトナー&ジェントル・ソウツ「Gentle Thoughts」 [音楽]

20111022.jpg
フュージョン好き・オーディオマニアにはおなじみの1枚。

1970年代後半、リー・リトナー、デイヴ・グルーシン、アーニー・ワッツらが、LPのマスター原盤にその場で音を刻み込む「ダイレクト・カッティング」という手法で一発録りしたスタジオライブだそうで、まだ若かりし彼らのエネルギッシュなセッションが緊張感とともに展開されるのがよくわかる。

CD版は同時に作られたマスターテープから起こされたものだが、それでも相当な高音質だし、なにより音楽として大好きなので、オーディオチェック用のリファレンス・ディスクの1つとしても活躍してもらっている。
中でも4曲目「Captain Fingers」は、ハービー・メイソンの鮮烈なドラミングが炸裂し、メンバー達が超絶技巧で高速ユニゾンをキメまくるという圧巻の曲なのだが、これがオーディオ的にも相当難易度が高い。とにかく音の密度が高くてキレがあるので、まずアンプやスピーカーの分解能が高くないと、音がダンゴになって話にならない。今のシステムを選ぶときにも、ゆったり味わい深く聴かせるのが得意な機器の多くは、試聴を始めて5秒以内に粉砕されてしまった。
逆に、この曲が気持ちよく聴けるシステムなら、フュージョンとボーカルのないジャズについてはもう安心して聴けるんじゃないかと思う。

と、こんなことを書くためにちょっと調べてみたら、このときのテイク2のバージョンがつい先日復刻されたことを知ってびっくり(タワレコの紹介ページ)。何かに呼ばれたのかしら。
ソロ部分の演奏が異なるそうなので、とりあえず買います。うーんこれは楽しみ。

がんばれ、高音質音楽配信 [音楽]

音楽のダウンロード配信について、こんな記事を書いてから1年近く経った。
なんか今読むと無駄に長い文章でわかりにくいけど(笑)、この考えは今もだいたい変わっていない。

で1年後の現在はどうか。最近、こんなことをツイートした。
  • akasyouakasyou昨年ブログを立ち上げた最初の記事にも書いたが、・CD音質を超えるマスター音源を ・DRMフリーで ・簡単にダウンロード購入できる仕掛け と、・FLACやDSDなどの高音質ファイル形式にも対応したプレイヤー が揃えば、音楽販売の環境として理想的だと思う。06/09 07:33

現状を見ると、どうにも惜しいと思う。
バラバラに見れば、いいところまでいってるのだ。

・高音質の音楽配信サイト
CDを超える音質の音楽配信は、いくつかのサイトががんばっている。
(e-onkyo、リンレコード、OTOTOY、HDtracks、KRIPTON HQM STORE など)
当初はクラシック、ジャズなどがほとんどだったが、ロックやポップスなどへも広がり始めているようで喜ばしい。
この流れに勢いをつけるためにも、大手レーベルの参入が待ち遠しい。

・携帯音楽プレーヤー(DAP)
高音質ファイルはWAV、FLAC、DSDなどの形式が上記サイトから配信されている。
iPod/iPhoneやWalkmanはWAV形式には対応しているが、WAVは容量が大きい、タグ情報が標準化されていないなど、使い勝手がやや悪い。
FLACは規格が公開されており音質、使い勝手のバランスも良いファイル形式なので、本命になってほしい。
現状、FLAC形式に対応したDAPはiriverやCOWON等から出ているが、小型で大容量で低価格という3拍子揃った製品は残念ながらまだ見当たらない。
(ちなみにDSD形式は音質的にはベストかもしれないが、対応しているDAPは実質的にKORG社の製品だけ。爆発的に売れるような製品が出ればまた状況は変わってくると思うが...)


このように高音質な音楽の配信・再生についてはいろんな会社ががんばっているが、それをつなげるような力は残念ながら働いていないように見える。「手軽に高音質な音楽を入手して楽しめる」という一連のユーザー体験につながらないのだ。

TVやネットで「いい曲だな」と思う音楽に出会う → クリック1つで音楽購入サイトにジャンプ → 通常音質/スタジオマスター音質を選んですぐ購入 → 手持ちのプレイヤーやPCにダウンロード → 音楽を楽しむ、 という環境がほしい。
個々の技術は既にあるので、こうした「ことづくり」に向けて関係者を結び付ける強力なコーディネーターが出てこないものだろうか。

  • akasyouakasyou今アップルが本気を出せばそれらを一人で作りあげることも可能。でも「一人勝ち」の構図には反対です。CDショップ、ミュージシャン、プロデューサー、ハード会社、ソフト会社等のステークホルダーがWin-Winとなるエコシステムがいい。06/09 07:41

現在、ゴールにもっとも近い場所にいるのは間違いなくアップルだ。
iCloudも発表し、購入した音楽を容易に複数のプレイヤーに送り込める環境も整った。あとは、iTunes Storeで高音質ファイルの配信を始め、iPodの音質を少し高めてやるだけで、これまで一般的とはいえなかった「CDを超える音質の音楽を楽しむ」というユーザー体験が一気に日常のものになる。
ただし、販売される音楽の価格はアップルが主導権を握り、配信されるファイル形式はアップルロスレス(ALAC)だ。他社が対応プレイヤーを作ろうにも、ライセンス供与するかどうかはアップルの思惑次第。
たぶんユーザーは幸せになれる。アップルも幸せだ。
でもそれでいいのだろうか。

ここはぜひ、有能な関係者たちにがんばっていただき、日本発の優れたエコシステムが実現することを期待したい。
iPodは素晴らしいデバイスだが、次に買う携帯音楽プレイヤーは良い意味で迷いに迷いたいと願ってます。

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2011/10/28 追記:
アップルロスレス形式(ALAC)がオープンソース化されたそうです。
これが今後の音楽配信やハードにどういう影響を与えていくのか、注目です。

フォープレイ「Let's Touch the Sky」 [音楽]

001.jpg
Fourplayの新作、「Let's Touch the Sky」を聴いた。
ラリー・カールトンに代わり、チャック・ローブが加入してから初めてのアルバムということで、どうなるんだろうと楽しみにしていた1枚だ。

で、まだじっくり聴きこんでない段階だけど、とてもいい。

グルーヴ感は以前からこのメンバーでやっていた、と言ってもわからないほどすんなりとなじんでいる。
2曲目と9曲目がチャック・ローブの作品だが、これがまたフォープレイの初期の頃を思い出させる若々しい曲。
人によっては好みが分かれるところかもしれないが、個人的には好きな方向だったのでとても嬉しい。

他のメンバーのプレイも、心なしか瑞々しさが増した気がするのが不思議。

あ、でもこれはラリーが歳取ってた、という意味では毛頭ございません。私もラリーのファンだし、彼の才能はほんとに尊敬してます。
メンバー交代という新しい風が、今回の新鮮な作品を生み出すきっかけになったのは間違いないと思います。

12月のライブまでの間、パワープレイで聴きまくるぞっ。

これからの音楽販売について [音楽]

音楽販売の市場がどうも厳しいことになっているようで、いつも音楽にお世話になっている身としては気が気じゃない。

先日、とあるアーティストがインストアライブの冒頭、「CDが売れない時代のミュージシャン~♪」というフレーズを爪弾いたりしたもんだから、その後いろんなことを考えてしまった。
この手の議論は既にあちこちでされているけれど、私もつらつらと妄想していたよしなしごとを書きとめておこうと思う。

(初エントリーですがいきなり長文です)

****

これからの音楽販売のあり方を考える上で、まず与件(=変えられないこと)を把握しておこう。筆頭は「現在、CDという媒体はどんどん衰退している」ということ。この10年で国内市場はほぼ半減、世界でも趨勢は同じようだ。
日本レコード協会の統計

この流れは日本の少子化と同じように容易に変えがたいものだろう。
「どうしたらCDが再び売れるようになるか」という発想は、たぶんスタートラインとして間違っている。

CD衰退の理由はいくつもありそうだが、「ダウンロード配信へのシフト」「音楽以外の娯楽が増えたことによる嗜好の分散」「情報が多極化したために市場を牽引するヒット曲が生まれにくくなった」など、よく言われていることはどれも間違いではないように思う。

しかも、これらCDの売上減に作用している環境の変化もまた、個人や組織の努力では到底変えられない「与件」であることに気付く。こうしてみると、CDの売上減少そのものに歯止めをかけるのがいかに難しく、そこに注目するのがいかに的外れなことか、と感じざるを得ない。

ではどうするか。環境の変化のうち「ダウンロード配信へのシフト」は、CDが売れないだけで音楽そのものは売れているのだから、これを今後の柱に据えていくのがもっとも自然な考えだろう。
そもそもダウンロード配信は、材料費・加工費ゼロ、物流コストも極小で在庫を抱えるリスクもない、きわめて優れたコンテンツの販売方法なのだ。

そして今以上にダウンロードで音楽をどんどん買ってもらえるようにするには、さらにかんたん・低価格・高品質にしていくこと。つまり「1.欲しいときにすぐ買える」「2.なるべく安く」「3.いい音楽を」をとことん追求するのが王道と思う。ただこれは音楽に限らず、どんな商品にも言えることではあるが。

1.欲しいときにすぐ買える
これはiTunesや着うたフルではかなりうまくいっているように見える。ワンストップで決済までできて、多数のレーベルやインディーズまでカバーしているのはすごいことだ。
でも、デバイスが限定されている点がどうしても気に入らない。ダウンロードサイトについては、もっと機器に対してオープンな環境であってほしい。

また、さらに使い勝手を良くするために、音楽を耳にしたその場でアクセスできるようにしてほしい。
たとえばradikoやデジタルTVからのダイレクトリンク、鼻歌検索のmidomiとの提携など、まだできることはいろいろありそうだ。

2.なるべく安く
一部でよく違法コピーが売上減少の犯人にされるが、これは主犯格ではないと思う。ファイル交換をする人はそもそも有料であれば買わない可能性が高いので潜在的顧客とは言い難いし、レンタルCDをコピーする人は、正規の価格では高すぎると感じているのが本質的な理由だからだ。

だから、ダウンロード配信の環境づくりにあたっては、「CDより安くなる」という目標ではちょっと力不足だ。少なくとも「CDをレンタルしてきてリッピングするコスト(費用+手間)より、ダウンロードで購入するコスト(価格+手間)の方が良い」と感じてもらえなければ勝利できない。iTunesが成功している理由の1つは、このへんのバランスが絶妙なところだったのではないだろうか。

3.いい音楽を
いちばん言いたいのはこの部分。楽曲のよしあしについては難しいし、そもそも好みは人それぞれなので、ここでは触れない。
改善が遅れていると思うのは「音質」のことだ。音質を大幅に進化させてほしい。
具体的には「スタジオマスターのダウンロード販売」と「高音質ソースをきちんと再生できる機器の普及」だ。

iPod+iTunes、あるいはケータイ+着うたフルといった「携帯プレーヤー+ダウンロード配信」の爆発的普及が現在の状況を生んだわけだが、そのベースが不可逆圧縮の技術とセットだったために、いつの間にか多くの人はCDと較べてかなり品質の悪い音を聴くようになってしまった。
でもそれはハードや通信容量の制約によって仕方なくそうしてきただけで、その気になればもっと高音質な音源の提供は可能だ。それどころか、CDの音質(44.1kHz、16bit)をはるかに上回る、スタジオマスターの音質(96kHz、24bit)だって今やユーザーに届けられるのだ。
これはCDという媒体が超えることのできなかった壁だ。SACDやDVDオーディオはもちろんCDを超える能力があるが、残念ながらディスクという器に入っている点で、CDの衰退と同じ波に呑まれる運命にある。

オーディオ界ではスタジオマスター配信への期待は2年くらい前から出ているが、実際に一度その再生音を聴くと、誰でもその滑らかさと情報量に驚くと思う。手軽にスタジオマスターを購入して聴ける環境が整えば、多くの人が多少の差額を出してもそちらを買ってくれるはずだ。それくらいすごい。

こうした高音質の音楽が配信される世界にするには、まず96kHz24bitの音源が持つポテンシャルをちゃんと引き出せる機器を普及させなければならない。大容量のストリームに対応し、良いDAC・良いアンプを持つ再生機器を、できるだけ低価格で市場に出してほしい。ヘッドホンやスピーカーは、良いものが既にいろいろあるので大丈夫。

価格設定については、たとえば不可逆圧縮の音源(128~192kbps)は1曲150円、CD品質の音源は200円、スタジオマスター品質の音源は300円くらいでダウンロードできたらどうだろう。アルバムなら1000円、1500円、2000円くらいだととても嬉しい。

高音質配信のスタイルについては先行しているこれらのサイトが参考になる。
リンレコード
e-onkyo

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では最後に、こうした「いい音楽をなるべく安く、欲しいときにすぐ買える」環境を(大急ぎで)作っていくのに相応しいと私的に思っているプレイヤーたちを挙げておきたい。

まずスタジオマスターをきちんと再生できるハードウェア。据え置き型プレーヤーは既にリンが先行し、オーディオメーカーが群がっている。ないのは携帯プレーヤーやスマートフォン。これはソニーにぜひ頑張ってもらいたい。高音質配信によってハード・ソフト両面にメリットがあり、しかも技術もある。

次に音楽配信サイト。運営の中心は、できればタワレコかHMVを希望。いろんな意味でベストプレイヤーです。急がないと、電子書籍の準備を着々と進めるアマゾンや印刷会社や書籍取次に音楽配信までさらわれます。ただIT投資体力がなさそうなのでどこか支援してやってくれ。

一つ重要なこと。レコード会社はDRMを諦めたほうがいい。違法コピーに目くじら立てるより、手軽に買える環境を作るほうが市場が広がる。iTunesのようなクローズドでなく、オープンなエコシステムが構築できるかがカギだ。ソニーならmora、HMVならHMV Digital、タワレコならNapstarなど、各社これまで得た教訓やノウハウがあるはず。知恵を出し合ってほしい。

と思ったら、Googleも音楽配信に乗り出すらしい。さすがというかなんというか。
私はレコード屋さんを応援したいけど。

そしてアーティストの方々には、「いい音楽を」なんて失礼なことを言う気は毛頭ございません。固定ファンをしっかり守り育てるためのサービス活動も引き続き忘れずにお願いします。
レコード会社・所属事務所とアーティストの関係も大事だと思う。ファンサービスであればライブも含めて自由にできる関係がいい。
話はそれるが、アーティストがCDを売るのはいいと思う。サインやグッズを付けて売ればよいのだ。モノが残るという、CDの大きな付加価値が活きる。

レコード会社や事務所は、アーティスト個人ではリーチできない層にアプローチして、余分に得られた利益をアーティストと分け合うのが望ましい姿。アーティストにノルマとか余計な縛りを加えず、タイアップを取ったりメディアに露出させたりといった仕事に集中してほしい。(このへん、業界のことがよくわからないのでズレてるかもしれない...)

忘れてはならないのがエンジニアとディレクター。過度のコンプはダメ。音圧競争のせいで、一部を除いて邦楽の音質はボロボロだ。音楽好きな人に末永く売っていくためには、まずは良い音楽という原点に回帰してほしい。

思っていた以上にCDの衰退が早いので、脱CDで音楽を売って、しかも特定企業に利益が集中しないエコシステムをつくるのは焦眉の急になってしまった。ここまで書いてきたような、売る側、買う側の双方にメリットがある環境をなんとか早急につくりあげてほしいと思う。

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以上終わり。妄想していたことはだいたい書けました。もやもや考えていたことをはき出せたのでとりあえず自己満足。でもやっぱり早く実現してくれたらいいなあ。


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