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音楽のダウンロード販売の適正価格を考える。 [音楽]

ウォークマンの発表に気を取られてすっかり見落としていたが、10月1日からmoraがDRMを廃止して、ファイル形式もATRACからAAC 320kbpsに変更、という発表もあったんですね。
http://labelgate.com/press/pdf/LAG_PR_120920_FINAL.pdf

ようやく重い腰を上げてDRM廃止に踏み切ってくれたことは素直に評価したい。
ATRACからの路線変更も、残念だろうが現状では当然必要なことだし、むしろ遅すぎたくらいに思う。

以前も少し書いたことがあるが、今回は音楽のダウンロード販売における価格についてだらだらと長文メモ。

結論から先に書くと、今ダウンロードで音楽を買うのであれば
 ・1曲
   不可逆圧縮(AAC/MP3/WMA等):100~150円
   CD音質(FLAC/ALAC/WAV等):150~200円
   スタジオ音質(FLAC/ALAC/WAV/DSD等):200~300円
 ・アルバム
   不可逆圧縮:1000円
   CD音質:1500円
   スタジオ音質:2000~2500円

くらいが、「いい塩梅の」価格だと勝手に思っている。

適正価格といっても、買う側/ユーザーにとっては価格は安いほどいいだろうし、売る側にすれば費用と利益計算から価格の最低ラインは自ずと決まってくるものだ、という主張はあると思う。
ただ、現在のもろもろの価格水準から見て、上記くらいがユーザーが音楽に対して期待する値段じゃないだろうか。
音楽業界も従来とは逆の発想で、これくらいをターゲット価格として採算が取れるよう、利益配分のしくみを根本から設計し直してほしいと思う。

音楽における流通の変化は、新聞のそれと似ている。
 ・価値の本質がコンテンツそのものにあって、それを運ぶ物理メディア(CD/紙)は手段にすぎず重要ではないこと。(これがレコードとか本とかになってくると、物理的な質感も微妙に価値に影響する気がするけど…)
 ・従来、物理メディアの製造や流通のためのシステムが別に確立しており、そのためのコストも発生していたこと。
 ・そして商品の価格にはそうした製造や物流にかかるコストも反映されるのに対し、ユーザーが財布のひもを解いて対価を払うのはあくまでコンテンツであって、容れ物や物流に金を払っている意識はないというギャップが存在していたこと。

これがコンテンツのネット配信の普及に伴い、物理メディアがどんどん減少し、従来の製造や流通のシステムが大きな転換点に立たされているのが現在の状況だろう。
新聞販売店やレコード量販店の苦労は本当に大変なものだろうと思う。

しかし音楽の場合、特に問題なのは、コンテンツの作り手であるアーティストの手元に十分なお金がいかないこと。
CDの場合の利益配分(ウタレンのサイトに詳しい例があります)と同じような比率でダウンロード販売も配分されてはアーティストもたまらないだろうし、かといってダウンロードの曲単価を高くしたら、やはり売れなくなってしまう。
音楽業界は、流通システムの革命を早急に進め、アーティストと共生できる新たな音楽販売のしくみを確立しないと、共倒れしてしまうのではないかと本当に心配している。

1つ大きな抜け穴になるのがCDレンタルだ。
シングルが100円前後はまだしも、アルバムが300円から400円というレンタル料金は、いくらダウンロード配信でがんばっても容易には近づけない価格だろう。
私的複製の範囲であればレンタルCDから合法的にリッピングができる現在、あまりにもレンタルと購入の価格差が大きいと、ダウンロード販売の普及を妨げる要因にもなる。
利益配分の構造を抜本的に見直すならば、レンタルとダウンロード購入の価格バランスが取れるような著作権料の設定が必要ではないかと思う。

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長くなってしまったがあと1つ、違法コピーについて。
音楽のダウンロード販売を成功に導くには、(ユーザーが手軽に購入できるしくみの提供を前提に)単価を下げてどんどん買ってもらうしかないと思う。
ユーザーに少しでも不利益があれば売れなくなるのはCCCDの失敗でも明らかなので、DRMは諦めた方がよい。
その代わり違法コピー、違法配信はやったもの勝ちにせず徹底的に告発していくことで「不正は高くつく」という社会心理を作っていくしかないだろう。


なんだかんだ文句を書いてしまったが、音楽業界が強い危機感を持って新しいしくみを模索していることは感じているので、一致協力して早急に改革を進めてくれたら本当にうれしいし、もっと手軽に安く音楽を買えるようになったら今以上にじゃんじゃん音楽を楽しみたいと思う。

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(2012/10/14 本文修正)
当初の記述に勘違いがありました。レンタルしたCDのリッピングは、私的利用目的であれば合法という解釈になるようです。
したがって、「CDから簡単にリッピングができてしまう現在、あまりにもレンタルと購入の価格差が大きいと、ユーザーがつい出来心で犯罪者になってしまう……」のくだりは誤りでした。申し訳ありません。
本文中の該当箇所は削除し、著作権料にフォーカスした記載に改めました。

修正ついでに「ミュージシャン」→「アーティスト」に統一。
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