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これからの音楽販売について [音楽]

音楽販売の市場がどうも厳しいことになっているようで、いつも音楽にお世話になっている身としては気が気じゃない。

先日、とあるアーティストがインストアライブの冒頭、「CDが売れない時代のミュージシャン~♪」というフレーズを爪弾いたりしたもんだから、その後いろんなことを考えてしまった。
この手の議論は既にあちこちでされているけれど、私もつらつらと妄想していたよしなしごとを書きとめておこうと思う。

(初エントリーですがいきなり長文です)

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これからの音楽販売のあり方を考える上で、まず与件(=変えられないこと)を把握しておこう。筆頭は「現在、CDという媒体はどんどん衰退している」ということ。この10年で国内市場はほぼ半減、世界でも趨勢は同じようだ。
日本レコード協会の統計

この流れは日本の少子化と同じように容易に変えがたいものだろう。
「どうしたらCDが再び売れるようになるか」という発想は、たぶんスタートラインとして間違っている。

CD衰退の理由はいくつもありそうだが、「ダウンロード配信へのシフト」「音楽以外の娯楽が増えたことによる嗜好の分散」「情報が多極化したために市場を牽引するヒット曲が生まれにくくなった」など、よく言われていることはどれも間違いではないように思う。

しかも、これらCDの売上減に作用している環境の変化もまた、個人や組織の努力では到底変えられない「与件」であることに気付く。こうしてみると、CDの売上減少そのものに歯止めをかけるのがいかに難しく、そこに注目するのがいかに的外れなことか、と感じざるを得ない。

ではどうするか。環境の変化のうち「ダウンロード配信へのシフト」は、CDが売れないだけで音楽そのものは売れているのだから、これを今後の柱に据えていくのがもっとも自然な考えだろう。
そもそもダウンロード配信は、材料費・加工費ゼロ、物流コストも極小で在庫を抱えるリスクもない、きわめて優れたコンテンツの販売方法なのだ。

そして今以上にダウンロードで音楽をどんどん買ってもらえるようにするには、さらにかんたん・低価格・高品質にしていくこと。つまり「1.欲しいときにすぐ買える」「2.なるべく安く」「3.いい音楽を」をとことん追求するのが王道と思う。ただこれは音楽に限らず、どんな商品にも言えることではあるが。

1.欲しいときにすぐ買える
これはiTunesや着うたフルではかなりうまくいっているように見える。ワンストップで決済までできて、多数のレーベルやインディーズまでカバーしているのはすごいことだ。
でも、デバイスが限定されている点がどうしても気に入らない。ダウンロードサイトについては、もっと機器に対してオープンな環境であってほしい。

また、さらに使い勝手を良くするために、音楽を耳にしたその場でアクセスできるようにしてほしい。
たとえばradikoやデジタルTVからのダイレクトリンク、鼻歌検索のmidomiとの提携など、まだできることはいろいろありそうだ。

2.なるべく安く
一部でよく違法コピーが売上減少の犯人にされるが、これは主犯格ではないと思う。ファイル交換をする人はそもそも有料であれば買わない可能性が高いので潜在的顧客とは言い難いし、レンタルCDをコピーする人は、正規の価格では高すぎると感じているのが本質的な理由だからだ。

だから、ダウンロード配信の環境づくりにあたっては、「CDより安くなる」という目標ではちょっと力不足だ。少なくとも「CDをレンタルしてきてリッピングするコスト(費用+手間)より、ダウンロードで購入するコスト(価格+手間)の方が良い」と感じてもらえなければ勝利できない。iTunesが成功している理由の1つは、このへんのバランスが絶妙なところだったのではないだろうか。

3.いい音楽を
いちばん言いたいのはこの部分。楽曲のよしあしについては難しいし、そもそも好みは人それぞれなので、ここでは触れない。
改善が遅れていると思うのは「音質」のことだ。音質を大幅に進化させてほしい。
具体的には「スタジオマスターのダウンロード販売」と「高音質ソースをきちんと再生できる機器の普及」だ。

iPod+iTunes、あるいはケータイ+着うたフルといった「携帯プレーヤー+ダウンロード配信」の爆発的普及が現在の状況を生んだわけだが、そのベースが不可逆圧縮の技術とセットだったために、いつの間にか多くの人はCDと較べてかなり品質の悪い音を聴くようになってしまった。
でもそれはハードや通信容量の制約によって仕方なくそうしてきただけで、その気になればもっと高音質な音源の提供は可能だ。それどころか、CDの音質(44.1kHz、16bit)をはるかに上回る、スタジオマスターの音質(96kHz、24bit)だって今やユーザーに届けられるのだ。
これはCDという媒体が超えることのできなかった壁だ。SACDやDVDオーディオはもちろんCDを超える能力があるが、残念ながらディスクという器に入っている点で、CDの衰退と同じ波に呑まれる運命にある。

オーディオ界ではスタジオマスター配信への期待は2年くらい前から出ているが、実際に一度その再生音を聴くと、誰でもその滑らかさと情報量に驚くと思う。手軽にスタジオマスターを購入して聴ける環境が整えば、多くの人が多少の差額を出してもそちらを買ってくれるはずだ。それくらいすごい。

こうした高音質の音楽が配信される世界にするには、まず96kHz24bitの音源が持つポテンシャルをちゃんと引き出せる機器を普及させなければならない。大容量のストリームに対応し、良いDAC・良いアンプを持つ再生機器を、できるだけ低価格で市場に出してほしい。ヘッドホンやスピーカーは、良いものが既にいろいろあるので大丈夫。

価格設定については、たとえば不可逆圧縮の音源(128~192kbps)は1曲150円、CD品質の音源は200円、スタジオマスター品質の音源は300円くらいでダウンロードできたらどうだろう。アルバムなら1000円、1500円、2000円くらいだととても嬉しい。

高音質配信のスタイルについては先行しているこれらのサイトが参考になる。
リンレコード
e-onkyo

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では最後に、こうした「いい音楽をなるべく安く、欲しいときにすぐ買える」環境を(大急ぎで)作っていくのに相応しいと私的に思っているプレイヤーたちを挙げておきたい。

まずスタジオマスターをきちんと再生できるハードウェア。据え置き型プレーヤーは既にリンが先行し、オーディオメーカーが群がっている。ないのは携帯プレーヤーやスマートフォン。これはソニーにぜひ頑張ってもらいたい。高音質配信によってハード・ソフト両面にメリットがあり、しかも技術もある。

次に音楽配信サイト。運営の中心は、できればタワレコかHMVを希望。いろんな意味でベストプレイヤーです。急がないと、電子書籍の準備を着々と進めるアマゾンや印刷会社や書籍取次に音楽配信までさらわれます。ただIT投資体力がなさそうなのでどこか支援してやってくれ。

一つ重要なこと。レコード会社はDRMを諦めたほうがいい。違法コピーに目くじら立てるより、手軽に買える環境を作るほうが市場が広がる。iTunesのようなクローズドでなく、オープンなエコシステムが構築できるかがカギだ。ソニーならmora、HMVならHMV Digital、タワレコならNapstarなど、各社これまで得た教訓やノウハウがあるはず。知恵を出し合ってほしい。

と思ったら、Googleも音楽配信に乗り出すらしい。さすがというかなんというか。
私はレコード屋さんを応援したいけど。

そしてアーティストの方々には、「いい音楽を」なんて失礼なことを言う気は毛頭ございません。固定ファンをしっかり守り育てるためのサービス活動も引き続き忘れずにお願いします。
レコード会社・所属事務所とアーティストの関係も大事だと思う。ファンサービスであればライブも含めて自由にできる関係がいい。
話はそれるが、アーティストがCDを売るのはいいと思う。サインやグッズを付けて売ればよいのだ。モノが残るという、CDの大きな付加価値が活きる。

レコード会社や事務所は、アーティスト個人ではリーチできない層にアプローチして、余分に得られた利益をアーティストと分け合うのが望ましい姿。アーティストにノルマとか余計な縛りを加えず、タイアップを取ったりメディアに露出させたりといった仕事に集中してほしい。(このへん、業界のことがよくわからないのでズレてるかもしれない...)

忘れてはならないのがエンジニアとディレクター。過度のコンプはダメ。音圧競争のせいで、一部を除いて邦楽の音質はボロボロだ。音楽好きな人に末永く売っていくためには、まずは良い音楽という原点に回帰してほしい。

思っていた以上にCDの衰退が早いので、脱CDで音楽を売って、しかも特定企業に利益が集中しないエコシステムをつくるのは焦眉の急になってしまった。ここまで書いてきたような、売る側、買う側の双方にメリットがある環境をなんとか早急につくりあげてほしいと思う。

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以上終わり。妄想していたことはだいたい書けました。もやもや考えていたことをはき出せたのでとりあえず自己満足。でもやっぱり早く実現してくれたらいいなあ。


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